キャリアアップナビでは、マーケティングやクリエイティブ職のキャリアアップについて、毎月テーマをピックアップして解説します。今回は、青山商事でリブランディング推進室 室長を務める平松葉月さんにこれまでのキャリアについて伺いました。良い転職は、良質な情報を入手することから始まります。「こんなはずではなかったのに⋯」とならないための、転職情報をお届けします!
Q.デザインを本格的に学んだのは大学卒業後だそうですね。
大学時代は臨床心理士を目指していました。でも高校時代には美大進学も検討していたくらい、デザインが好きでした。大学在学中にデザインを仕事にしたいという思いが強くなり、卒業後に専門学校で2年間学び、広告制作会社に入りました。
あるカタログを担当したときのこと。ターゲットや売れ筋についてクライアントに質問したら、「外部のデザイナーには教えられない」と言われ、はっとしました。その時に、私がやりたいのは企画も含めたデザインであって、単なるデザインだけではなかったということに気づいたからです。
ちょうどその頃、エンタテインメント事業のラウンドワンに勤める知り合いから「うちに来ない?」と誘われました。事業会社のインハウスデザイナーとして、企画から制作まで一元的に手がけられるなら、と転職しました。
私のミッションは、店頭クリエイティブの統一と組織組成でした。最初に手がけたのは全国展開に向けた店頭のデザインルールの統一でしたが、社内のクリエイティブ担当者は、アートディレクターの私と店頭ポスター専任のデザイナーだけ。担当者のデスクには店舗からの制作依頼書が山積みでした。これでは企画の仕事はできません。必要な人員を採用したいと会社に訴え、専門学校時代の知人に連絡して自分でスカウトしたんです。「いまの仕事に満足してる?」って(笑)。
Q.チームをつくって環境は変わりましたか。
クリエイティブの制作部分をメンバーに任せられるようになったことから、私は広告宣伝、広報、プロモーション企画へと仕事の領域を広げることができました。年間計画の立て方やメディアバイイングを学び、限られた予算でのやりくりのなかで映画やアニメとのタイアップにも取り組みました。
特に2009年の劇場版『ONE PIECE FILM STRONG WORLD』とコラボしたキャンペーンは忘れられません。このキャンペーンは、映画を見てもらいたい層とラウンドワンの来客層が合致していたことでお互いWIN-WINのタイアップが成り立ったのですが、通常キャラクターの広告契約には高額の費用がかかります。
そこで考えたのが、ラウンドワンのお店を広告メディア化すること。店内ポスター掲示、店内サイネージ、ボウリングレーン動画放映、など場所ごとに媒体費をすべて算出し、タイアップ費用に見合う広告スペースを提供しました。この等価交換により、先方は映画の宣伝を、私たちは映画コラボをできるようにしたのです。
映画は観客動員数約400万人という大ヒット。上映期間のラウンドワンの集客にも寄与するお互いにとって最高の結果となりました。そして、エンドロールに広告協力として記されたのは、ラウンドワンともう1社のみ。10年以上経ったいまでも、鮮明に語れる一生モノの仕事です。
Q.順調なキャリアアップに見えますが、苦い経験はありますか?
ラウンドワン在籍時は大阪にいたので、マーケティングの仕事をするなら、情報が入手しやすく、幅広い仕事を手がけられる東京で働きたいと思っていた折、家電メーカーのマーケティング職のお話があったのですが、東京に引っ越した直後に組織変更で内定が取り消しに。あわてて転職活動を再度始めましたが全然決まらない。仕事も収入もなく、「私は社会から必要とされていない」と思った辛い日々でした。
3カ月後に、同社から営業部門に興味はないかという打診があり、営業は未経験で年収も下がりますが、早く働きたい一心で入社を決めました。
Q.仕事選びに自分なりの基準があると伺いました。
営業は未経験からのスタートでしたがプロモーションも兼務し、成果は出せたと思います。
その後、家電メーカーから転職したのは、ユーザーにストレートにメッセージを伝えられるBtoC企業で働きたかったからです。
そこで入社したのが直営店舗を運営する外食チェーン。広報、マーケティング部署の立ち上げと、経営とマーケティングの統合でV字回復を達成しました。そして現在の青山商事では、リブランディングに取り組んでいます。
「好調に転じた企業から、なぜ苦境の紳士服業界に行ったのか」とよく聞かれます。私は自身の価値は変化を起こせることだと思っています。順調でない企業こそ新しいことに挑み、現状を打破しようと変化を求める。そこにこそ私の役割があると思っています。
さらに、常に挑戦するためのこだわりとして1業種に一度しか行かないと決めています。ですから紳士服業界は青山商事が最初で最後。これまでの改善を担当部門が自走できるようにすること。そのために変化を柔軟に受け入れる風土にすること。まだまだやることがある。私の役割が尽きるまで、奮闘を続けます。
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