動画広告の極意
☑見たくなる「入口」、好きになる「体験」、言いたくなる「出口」をつくる。
☑ブランドと視聴者の興味が重なる「太いトキメキ」を探す。
☑冷徹な俯瞰と情熱的な寄り目を持つ。
良い動画なのに見られない。なんで?
ブランドが言いたいことがある、買ってもらいたい商品がある。だから一生懸命に企画を考えてつくってつくり直して⋯⋯。その結果、できあがった動画が、どんなに商品を面白く描いても、どんなにブランドを感動的に描いても、誰にも見てもらえていない⋯⋯ということが往々にして起きます。
Webの動画広告に限るとテレビCMとは異なり、Instagramなら1分、Twitterなら2分20秒、TikTokなら3分、YouTubeならば無制限、長さ以外にも、さらに先述したメディア以外にも選択肢はいくらでもあります。見ているうちにどんどんのめり込んでいく。そして見終わると商品やブランドが大好きになる。長い秒数の動画ならではの深い体験をつくって、たくさんの人にブランドや商品が愛されるような大きな成果をあげることができます。一方で中身は、たしかに良いのに、そもそも見てもらえていない、そんな事例も数多くあります。
動画広告づくりで考えるのは、動画のことだけじゃない
テレビを見ながらスマホを触り、1.5倍速で映画を見て、そして広告は6秒でスキップする⋯⋯。今や私たちが相手にしているターゲットたちは、ほぼ完全に自由にコンテンツ間を行き来しています。広告を出せる場所自体はたくさん増えましたが、広告クリエイティブにとっては不利に感じることばかりです。
私たちは動画作品ではなく、動画を使った広告をつくっています。似ているようで違うのは、前者は見てもらえる前提、後者は見てもらえない前提にあることです。見てもらえない前提ならば、動画の中身以外にも目を向けて、見てもらうための工夫を考える必要があります。ここが決定的に違う点です。
その工夫を考えるとき、①見たくなる入口 ②好きになる体験づくり ③言いたくなる出口という形で便宜的に整理しています。
ブランドと視聴者の興味が重なる 太いトキメキの共感ポイント
そもそも企業が伝えたいことは、加工しないと伝わりにくい場合が多いです。そこでまずは、商品やブランドの伝えたいことやありたい姿と、視聴者の興味や生活が重なり、トキめかせることができるポイントを探します。
ここが特にWebでの動画広告のクリエイティブディレクションの肝であり、「入口〜体験〜出口」と整理する上でも、大きなよりどころになります。ポイントは視聴者への一方通行の動画広告にならないように。そして、ただ面白いだけにならないように、共感や興味を引き出しながら商品やブランドを好きにさせられる太いトキメキポイントを探すことです(言うは易し⋯)。
ヒントは「たくさんのひとり」をイメージすることです。社会的なモーメントと組み合わせるときも、商品やブランドをエンタテインメントに変換するときにも結局、届ける相手は1人ひとりの集合体になります。想定するターゲットを自分に憑依させて、徹底的に彼ら彼女らの興味の向き先がどこにあるのかを考えます。
ただ、商品やブランドに関連が遠すぎると「面白いけど何の広告だったっけ⋯⋯?」と広告としては基本的な機能不全を起こしてしまうのでバランス感にも注意です。
企業やブランド×視聴者の興味が重なる共感ポイント【図1】を探し当てることができたら、それを中心軸に置いて動画を考えていきます。映像監督・プロデューサーと一緒に動画をつくり始めますが、動画が目指している共感ポイントをどう演出していけば、視聴者にとっての深い共感をつくることができるのか、細かい部分や飽きさせないためのストーリーラインを考えます。その際に、先述の「入口〜体験〜出口」に整理をしながら全体を俯瞰視します。
①見たくなる「入口」 最悪の視聴態度を念頭に
企業商品・ブランドが視聴者の興味と重なる共感トリガーを見つけられたとして、それでもわざわざ広告を見てみよう!と思う人はなかなかいません。最初から不利な状況でのスタートになります。媒体の力で割り込みをすることもできますが、広告に割り込まれた視聴者は強いストレスを感じてしまうので、ここでも不利な状況でのスタートです。
まず再生以前に人目に触れることが難しい。いざ目に触れることができても、視聴してもらえるかどうか、興味を引けるチャンスは一瞬しかありません。いずれにしても最悪の視聴態度で始まることを念頭に、あざといくらい「まあ...