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宣伝担当者が知っておきたいクリエイティブの基本

プラットフォーム多様化時代にキリンがnoteを選んだ理由

平山高敏氏(キリンホールディングス)

    「オウンドメディア運営」の極意

    ☑オウンドメディアの定義は多岐にわたると理解する

    ☑フォロワーやPVなど、数字のグロースだけを目的にしない

    ☑プラットフォームは、企業のコミュニケーション戦略にあったものを選ぶ

KIRIN公式noteの担当者の「オウンドメディア観」

オウンドメディアを一言で言うと何でしょうか。「ファンと握手をする場」と答える人もいれば、「リード獲得のためコンバージョンまで追いかける場」と考える人、「従業員を含めたあらゆるステークホルダーに企業としての姿勢のようなものを伝える場」と捉えている人もいるかと思います。はたまた「企業が獲得したいイメージを貯める場」という声もありそうです。

上記の回答は、実は、私がとあるカンファレンスで登壇しているときに実際に挙がったものです。「オウンドメディア」は字面だけ見れば「企業が自社で保有するメデイア」と捉えることができますし、多くのWebサイトでもそう説明されています。ただそれだけのことなのに、これだけの解釈があり、それぞれの企業がそれぞれの目的を持って運営していることには興味深いものがあります。

また、コンテンツを発信できるSNSプラットフォームも増え、企業発信はますます多様化しています。そんな時代にあって、企業がとっていくべきオウンドメディア戦略とはどのようなものになるのでしょうか。私が担当しているキリンのオウンドメディア編集経験に基づいた考えをお話できればと思います。

申し遅れましたが、私は新卒でWeb広告代理店の営業を6年ほど経験し、その後旅行書を扱う出版社でWebメディアの立ち上げ・プロデュースを行い、2018年にキリンに入社しました。1年後の2019年に、「キリンビール公式note(現「KIRIN公式note」)を立ち上げ、現在に至るまで、キリンの企業WebサイトやSNS上のコミュニケーションも徐々に形を変えてきました。

現在のキリンのオウンドメディアチームのスローガンは「だからキリンが好きなんだ」。キリンの商品に触れて好きになってくれたお客さま、CMを見て気になってくれた方、キリンの取り組みに携わって下さっている方、そしてもちろん従業員など、キリンと何かしら関わりがあって、オウンドメデイアに訪れていただいた方に対して、「キリンが好きな理由」を持ち帰ってもらうためのコミュニケーションを行うことを、各メディア運営のベースの考え方としています。

キリンのオウンドメディアを取り巻く課題は何だったのか

現在、キリンのオウンドメディア運営はコーポレートコミュニケーション部、つまりは広報部門内のオウンドメディアチームとして、企業情報サイト、公式SNSアカウントなどのメディア戦略策定からコンテンツ企画・発信及び効果測定に至るメディアの運営全般を担っています。メディアは担当制で、キリンビール、キリンビバレッジのTwitter、Instagram担当やnote担当、企業情報サイト・メルマガ担当、といったように人員が割り振られています。

しかし、この体制になったのは2020年。キリンのオウンドメディア戦略もその前年を契機に変化しました。

それまではデジタルマーケティング部というグループ全体のデジタルマーケティングの支援・ソリューションを主目的とした部門で担当。当時はSNSアカウントであれば、いかにバズを起こすか、いかにフォロワー数を増やすかという目に見える数字のグロースを第一義に置いていたり、はたまた、当時は会員制のアプリを立ち上げ、会員獲得のための施策と回遊を高めるための「プッシュ施策」、つまりキャンペーンによるコミュニケーションが主な方向性でした。

オウンドメディア運営において、もちろんグロースは大きな目的のひとつです。しかし、グロース“だけ”を目的としたメディア戦略はどうしてもコンテンツが“大味”になっていきます。メディアの発信を通じてお客さまとどんなコミュニケーションを行っていくべきかの議論が薄れ、数字をあげることだけが目的となってしまうようになっていきます。当社もその状況でした。

「生活者」に向けたものから「ファン」に向けたメディアに

そんな状況のなか、改めてオウンドメディアの役割や企業発信のあるべき姿を数カ月かけて議論しました。ひとつの方向性として見出したのは、「広告・商品だけでは伝えきれない価値を伝える場所」にする、ということ。「数」を積み上げていくことの優先度を下げ、既にキリンに好意を抱いていただいている方たちに向けて、誠実にキリンの考えていることをオウンドメディア全体で伝える。それによって、「だからキリンが好きなんだ」と理由づけができ、さらにキリンを応援してくれるようなコミュニケーションを目指そうと決意を新たにしました。

メディアのグロースについての考え方も、広義の生活者へ向けた「バズ」のような短期的な視点は放棄し、熱量の高いファンとのコミュニケーションから「同心円状」に広がっていくことを理想にしました(図1)

図1 同心円状に広がるコミュニケーション

この方針変換は、短期的な数値達成より長期的な価値の浸透に重きを置くことを意味しています。これまでは「数」を稼ぐために行っていた、Web上の流行に合わせたコミュニケーションから、ファンを起点にしたコンテンツによるコミュニケーションへ変化したのです。

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