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宣伝担当者が知っておきたいクリエイティブの基本

パナソニックに聞く、顧客起点と未来思考で生み出すコンセプト

木村博光氏(パナソニック)

    「コンセプト開発」の極意

    ☑「足し算」から「引き算」の企画へと転換し、顧客に対し本質価値を魅せる。

    ☑自社を象徴するアイコンを導き出し、「成熟」と「新規」両面で開発する。

    ☑未来のくらしを起点にしたバックキャスト、価値創出が「未来の定番」をつくりだす。

本質を魅せるアイコン化で顧客にダイレクトに伝える

昨今、ウェルビーイングの重要性が盛んに叫ばれるようになりましたが、コロナ禍に端を発したライフスタイルの変化から、その注目度はますます高まっています。

戦後日本は経済成長を経て豊かな国になりました。大量生産・大量消費が進む中、2000年代にはデジタル化と多機能の時代を迎えます。そうして機能を高める“足し算”の企画で他社との差別化を図るようになりましたが、次第に顧客にとって欲しいものがない状態になってしまいました。家電のコモディティ化です。

こうした時代背景の中で、我々はくらしの原点への回帰、豊かさの再定義について考え、家電のあり方を見直し始めています。例えば、食なら「簡単で便利な調理家電」から「体験も含めたおいしさの提供」へ、美容では「外見の美しさ」から「内面や心の美しさ」を、家事では「労働の軽減」から「清々しい家事体験」というように。その結果、導き出されたのが“足し算”から“引き算”の企画への転換です。具体事例を挙げながら説明しましょう。

ひとつ目が新しい「マイスペック」という調理家電のシリーズです。調理家電は多機能化が進みましたが、一方で機能が多すぎるがゆえに使いにくい、結局限られた機能しか使わないという現状がありました。マイスペックシリーズのオーブンレンジは、基本的にはレンジとオーブンの最小限の機能のみです。そして必要なアタッチメントを購入してアプリと連携すれば、グリルやスチーム調理など自分仕様に機能をアップデートできます。

炊飯器でもアプリでアップデートされるコースや調理レシピで一人ひとりにちょうどいいおいしさを提供。アプリ側で機能を充実し、機器本体は徹底的に要素を整理することで、日々の使用性も佇まいも「ちょうどいい」調理家電を実現しました。

ふたつ目が「バイタリフトかっさ」です。かっさは中国で古来よりヘラ状の石を用いて行われてきた民間療法のひとつです。従来品は凹凸した形で用途が分かりにくい商品でしたが、上質なスキンケア体験の提供をメッセージとして伝えるために、かっさの原型である石をメタファーとしました。

当社ではすでに他の美容機器でハイエンドモデルを提供しており、技術的にも自信を持っていましたが、お客さまからは総合家電ゆえに専門性の部分で低く見られがちでした。訴求したい効果をダイレクトに伝えるには、装飾的な部分を引き算で廃し、本質価値をアイコニックに魅せることが必要だと考えました。

ターゲットを絞ることも引き算のひとつです。「ファーストシェービングシリーズ」が狙うのはZ世代といわれる10代の男性。実際にヒアリングを重ねたところ、ムダ毛の処理に対する恥ずかしさや刃に対する恐怖心があると分かりました。デザインにあたり肌にやさしい安全な形を考慮したのはもちろんですが、カラー展開として黒と青に加えてイエローを提案。

通常、家電は白黒やシルバーが定番色で、「イエローは売れない」が定説でした。そこをあえて提案したのは、黄色がトレンドカラーであったことと、ボディケアに対するポジティブな世界観を伝えるためです。社内で反対もありましたが、最終的にはイエローの販売が計画を大幅に上回る結果となりました。従来のマスマーケット・マスターゲットをベースにした商品開発からZ世代というこれまで把握していなかったお客さまインサイトで市場開拓した事例です。

これらの商品コンセプトの切り口を示すプロセスを、私たちは『アイコン化』と呼んでいます。“シンプル”と短絡的に考えるのではなく、デザインの意味と背景を深掘りし、ひとつの象徴的な形に昇華する。アイコンは商品の提供価値を表し、自社の独自性とブランドに繋がる大切な要素です【図表1】。

図表1 アイコン化によって生まれた商品群

成熟と新規の二軸の進化でくらしの質向上を目指す

パナソニックの商品には、成熟商品と新規商品の二軸の進化があります。成熟商品は...

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