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宣伝担当者が知っておきたいクリエイティブの基本

変革の時代をリードする、あたらしいコンセプト

三浦竜郎氏(博報堂)

    「コンセプト開発」の極意

    ☑ひとりの制作指針から、みんなの協働指針へ。

    ☑ゆるやかなガイドラインから、創造性に火をつけるプラットフォームへ。

    ☑個人が思いつくものから、みんなでたどりつくものへ。

ネットミームにみる、コミュニケーションが必要な理由

2年ほど前。Twitterであるひとりの開発者が投稿した『Why communication is important in software development🙂』という動画が話題になりました。背中に紙を貼り、ペンでクライアント→ビジネスアナリスト→デベロッパーが「絵の伝言ゲーム」をしていくのですが、クライアントがカメのようなものを書き、みんな必死で意図を汲み取ろうとするのですが、どんどん崩壊していきます。

なぜこの動画は国を超えていいね!を集めたのでしょうか。私は、誰もが一生懸命仕事をしているにもかかわらず、自分たちがどこに向かっているのかわかっていない人たちが、よく分からないアウトプットを生んでしまうという状況について、みんな身に覚えのあることだったからではないかと考えています。

図表1 実際の投稿より

大航海時代には「コンセプト」という航路が必要

5年前まではなかった仕事をしている時代です。数年前までは私たちの専門用語だったパーパスやトランスフォーメーション、UXデザインといった言葉は、もはや一般用語。マーケターやクリエイターの業務領域は急速に拡大しました。それは、それだけ新しい人との仕事も増えていることを意味しています。

そんな状況で「つくったことのない何か」をつくろうっていうわけですから、たまったものではありません。大航海時代よろしく、新天地を求めて船を出すわけですが、ぼんやりした地図とゴールはあっても、行き方は誰も分からない。「ここを通って、こんな風に行くと、着けると思うんですよね」という航路を発見する必要があります。いま求められているコンセプトは、そんな航路のようなものではないかと私は考えています。

かつてコンセプトは、ひとりの頭の中にある制作方針を共有する意味合いが強いものでした。カメラだったら「人は愛する対象にしかレンズを向けない」という発見だったり、クルマだったら「野生を忘れずに都市を生きる」といった時代の感性だったり、解釈の幅があるコンセプトをジャンプ台として、ヒット商品や名作広告が次々と生まれていました。

入社したてのころ「コンセプトは誰でも知っている言葉だが、説明できない。だからこそ、説明できるようになりなさい。それだけで君はプロに一歩近づく」と教えられたことをよく覚えています。「前面に出るわけではないが、ないと美味しくない、料理における出汁」「すべての錠を解いてくれるマスターキー」「なくても飛べるが、大気圏を突破するには必要なブースターロケット」といったコンセプトの役割について夢中で勉強しました。

こういった考え方はより体系的になりながら、ビッグアイデアやクリエイティブプラットフォーム、クリエイティブディレクションという概念の中に、進化して生きています。

これらは大小のチームがひとつの目標を達成するために、アイデア出しや実制作プロセスの中でゆるやかなガイドラインのような役割を果たします。このガイドラインは、クリエイティブワークの方向性を決め効率と効果を高めると同時に、受発注関係における途中成果物や合意内容として機能します。クリエイティブワークは、最終的には視覚や聴覚、触覚といった五感・非言語領域がクオリティを左右しますので、その「言葉にならない/すべきでないもののギリギリ一歩手前の合意ポイント」がビジネスでは非常に重要になるわけです。

この点において、コンセプトは抽象的であることが良しとされる部分もありました。具体的だとガードレールが狭くなり、アウトプットが窮屈になりがちだからです。

コンセプトは長年こうしたふわっとしたものでしたので、ホイチョイプロダクションの名作「気まぐれコンセプト」のタイトルに象徴されるように、移ろいゆく時代を眺めながらクリエイターが「これはイケる!」と思いつくものでした。あるいはマーケターなら、調査をする中で発見されたインサイトの捉え方を発見して「こうすれば勝てる!」と思いつく。

“気まぐれ”なんていうとふざけているようですが、シリアスに考えすぎて凝り固まりがちなビジネスにおいて、むしろ気まぐれなことが時代をパッととらえることはよくあるわけで、社会への洞察の中からいわゆるブレインストーミングをして、盛り上がったものを選ぶというスタイルが主流だったかと思います。

個人が思いつくものから、みんなでたどり着くものへ

近年、クリエイティビティが発揮される領域が広告だけでなくブランド体験や...

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