消費者インサイトに迫る極意
☑導入メリットが想像できるような具体例を提示する。
☑担当者によって差異が生じないよう、ヒアリングシートとトークスクリプトを作成する。
☑ヒアリングの中で、常にアップデートを繰り返す。
顧客の声を聞いて磨き上げた 新規開発事業
今回、私たちが開発した『RICOH eWhiteboard 4200(大型電子ペーパー)』は、建設業や製造業の現場、医療現場などの業務をデジタル化するためのソリューションです。開発から事業化、発売後に至るまで、お客さまからのフィードバックを基に商品を磨き上げていきました。今回はその取り組みを軸に、お話していきたいと思います。
最も重要なのは、その商品を使っていただきたい現場の方々の声を聞くことでした。
ヒアリングシートとシナリオは、常にアップデートを繰り返す
当社のメイン事業である複合機やプリンターを導入していただく際のお客さまの窓口は、総務やIT部門が中心です。今回私たちが提供しようとしているのは、建設や製造、医療など現場で作業をする人向けのサービスであり、既存のルートではそのような現場の方々になかなかリーチすることができませんでした。そこで私たちは各業界の展示会などに参加して、現場の方との接点をつくり、徹底的に利用者の生の声を聞くことを重視しました。
また、特に今回のような新しいデバイスを起点としたサービスの場合、実機サンプルなどが何もない手ぶらの状態でお客さま訪問をし、「こんなソリューションを考えていますが価値がありますか?」と聞いてもなかなか興味をもっていただくことができなかった、というのが実態です。このため、最初の段階でお客さまにイメージをもっていただくために、抽象的な説明ではなく、具体的な言葉や図をもって仮説とソリューションを説明する必要があります。
そして、ある程度のヒアリングの感触を得たら、そこでサンプル機製作の投資判断を行い、早くサンプル機で実体験をしてもらうことが重要です。それによりお客さまの方でもイメージがわいてきて、「こんなことに使えるかも」と話が飛躍的に発展しました。このあたりの投資判断の基準やタイミングは当社でも今後の課題であると認識しています。
ヒアリングするにあたっては、私たちもついあれもできるこれもできるという、機能紹介になってしまうこと。あるいは「こういうことはできますか?」という質問に答えることに終始してしまって、肝心の、お客さまの業務課題を聞けずに終わってしまう事も多々ありました。そこで作成したのが、業種別のヒアリングシートです【資料1】。
複数名で調査するにあたり、ヒアリングする人やその時の会話の流れによってヒアリング結果にバラつきが出ないようにすると共に、定量的なデータとして結果が得られるよう、ヒアリングシートとトークスクリプトを作成しました。
ヒアリングシートはA4一枚。仮説として立てた課題解決のシナリオに、「かなり価値がある」「価値がある」「あまり価値がない」「ほとんど価値がない」の4段階と「その他」の項目を設定し、仮説がどこまでお客さまに当てはまるのかを判断していきました。ヒアリングシートとあわせて、商品導入前後の業務シナリオを描いた資料を作成しました【資料2】。
業務のどのような場面で商品が役立つかを、【資料1】で上げた課題解決のシナリオごとに図示。実際の業務の中で、活用するイメージをもってもらえるようにしました。
このような資料と実機でお客さまに改善のイメージをもっていただき、何度も繰り返しヒアリングすることでソリューションを磨いていきました。インターネットなどで工事現場監督の仕事について調べたり、動画で「現場監督の一日」などを観たり、そこで概要をつかむことは可能だと思いますが、どのような図面をどのように使っているのか、何枚くらい使うのか、どんなことを書き込むのか、誰と情報を共有するのかといった具体的な業務フローは、実際に訪問して聞くしかありません。
また、こうしてヒアリングを...