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宣伝担当者が知っておきたいクリエイティブの基本

「なりわい」を再定義し言語化するためのフレームワーク

朝岡崇史氏(ディライトデザイン)

    「価値の再定義」の極意

    ☑ミクロとマクロの環境分析で未来のシナリオを言語化する。

    ☑暗黙知の企業DNAを形式知化し「企業の意思」を明確にする。

    ☑「未来シナリオ」と「企業の意思」を掛け合わせ、「ありたい姿」と「なりわい」ワードを抽出する。

企業の「なりわい」を言語化して社内外の変革をもたらす

「なりわい」(生業)というキーワードは日本語としては古くからある言葉であるが、経営やマーケティングの世界で使われるキーワードとしては新参の存在である。

「なりわい」とは、企業が近未来の「ありたい姿」=「ビジョン」を実現した時に提供したいと考えている体験的な価値(CX)をお客さまにも分かりやすい言葉で表現したもの。企業が「なりわい」を変革することは、お客さまから見れば企業が提供する価値が刷新されることに等しい。

また「なりわい」は企業にとって経営の行き先を示す、いわば「旗印」の役割も果たす。旗が立つことでお客さまに対して企業が提供する価値の本質がわかりやすくなるだけでなく、インターナル(従業員)をはじめとするステークホルダーに対しても企業が近未来に向かおうとしているゴールがクリアになり、組織や階層の枠組みを超えた事業変革や組織文化変革の活動が進みやすくなるというメリットが期待できる。

DXの進展によって企業がビジネスモデルの変革を迫られたり、事業環境のドラスティックな変化によってゲームチェンジを迫られたりしている現在、多くの企業が生き残りをかけて「なりわい」革新にチャレンジしている。

最短5日間のワークフローで具体的な製品・サービスまで構想

企業にとって「なりわい」革新の初めの一歩となるのが、『見える化』(認知・理解の獲得)であることは言うまでもない。

仮にあなたの会社にカリスマ的な経営者が君臨し、企業の意思も、掴むべき未来も、目指すべき未来でさえも即断即決してくれると言うのであれば、初めの一歩で躓くことはないかもしれない。しかし「プロ経営者」が定着していない日本企業の場合、「経営層を含めたグループでの合意形成」がベースになって進むべき方向性が決断されるケースが多数派のはずだ。

そこで「なりわい」の再定義をサポートするために電通が開発したのが、イノベーション創出プログラム『Power Session®』である。特徴は、ゴールである「ありたい姿」(ビジョン)を明確に描き、そこから逆算して戦略ロードマップを構築し、具体的な製品やサービスを発想するアプローチにある。また、アジャイルに設計されたプログラムでもあり、事前の準備さえ万端にしておけば、最短5日間で「ありたい姿」、「なりわい」ワード、サービスプランのプロトタイプまでを揃えることが可能である。ワークフローはざっと以下のようになる。

〈DAY1〉「なりわい」再定義のタスクフォースチームを編成する
〈DAY2〉プロジェクトのキックオフを行い、専門家を呼んで情報共有を行う
〈DAY3〉外部環境を分析し自社が属する業種の「未来シナリオ」を描く
〈DAY4〉企業の意思で掴むべき未来を決め、「ありたい姿」を再定義する
〈DAY5〉具体的な施策のアイデアを創出し、精緻化を行う

連続した5日間である必要はなく、1〜2カ月かけて実施しても良い。ここでは、外部環境を分析し自社が属する業種の「未来シナリオ」を描く〈DAY3〉と、企業の意思で掴むべき未来を決め、「ありたい姿」を再定義する〈DAY4〉の手順とフレームワークを中心に解説する。

自社を取り巻く未来シナリオをお客さま主語で描く

最初のステップは、自社が身を置く3〜5年後の業界の近未来の姿を構想し、クリアな「未来シナリオ」を描くことだ。それには「MECE」(ミーシー)な外部環境分析を行うことが必要になる。「MECE」とは「Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive」の略語で「だぶりなく、もれなく」を意味する。そこで活用するのが、「SEPTEmber/5 Forces」のフレームワークだ【図表1】

【図表1】 「SEPTEmber/5 Forces」のフレームワーク
「3〜5年後の〇〇と人々の関わりについての未来」を考える上で重要である/気になるキーワードを書き込む。

「SEPTEmber」は「マクロ環境」の分析であり「社会(Society)」、「経済・税制(Economy)」、「政治・政策(Politics)」、「技術(Technology)」、「地球環境(Environment)」の5つの項目で構成される(「地球環境」を除いたものは一般に「PEST」分析とも言われる)。

それに対して、「5 Forces」(ファイブフォース分析)は「ミクロ環境」の分析であり、マイケル・E・ポーターが『競争の戦略』で提唱した「売り手の交渉力」、「買い手の交渉力」、「競争企業間の敵対関係」、「新規参入業者の脅威」、「代替品の脅威」の5項目をベースにしている。

そこに「関連市場・環境」1項目をプラスした。DX時代に入って業界の垣根を超えたプレイヤーが突然参入するケースが増えていること、また企業を取り巻く事業環境の中でもアナログ時代には関心が低かったESGやSDGsなど企業の社会的責任が重視されていることを...

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