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宣伝担当者が知っておきたいクリエイティブの基本

若手が担ったリブランディング 変えること・変えないことの判断基準

桶川綾乃氏(コーセー)

    「プロダクトリブランディング」の極意

    ☑顧客調査で、変えること/変えないことの基準をまず明確にする。

    ☑価値を明文化することで、メディアコミュニケーションも円滑になる。

    ☑プロジェクトを通じてブランドに愛着がわき、社員の意識向上につながった。

社内横断プロジェクトを20代が中心になって進行

「ファシオ」のデビューは2000年。FASION&FUNCSIONを掲げ、ウォータープルーフのマスカラを主力とした、機能性が高いブランドとして認知されていました。販売店はドラッグストアが中心で、価格帯は1200円前後と、若年層がメインターゲットとなる“プチプラ”ブランドです。ロングセラーになりつつあるなかで、ブランドの継続的な成長のためには常にその時々の若年層と接点を持ち続ける必要がある。誕生から20年経ち改めて若年層に知ってもらう必要があると感じ、リブランディングを決定しました。

若年層への認知度向上を目的としながら、これまでのユーザーの皆さんにも継続して使い続けてもらうにはどうしたらよいか。コーセーとしては初めて、20代の若手社員を中心としたプロジェクトチームを組み、リブランディングを進めていきました。

当社では各ブランド別に事業部があり、そこが商品の企画機能を持ちます。企画を立てて商品ができて、パッケージを制作。その後テストを行い生産体制などが整った後、販売・宣伝部門でプロモーション方法を考えていく、というバトン方式がとられていました。

しかし今回のプロジェクトチームでは、各フローで「ファシオ」を担当してきた20代の社員を中心に、総勢16名が集結。バトン方式ではない、部門横断のプロジェクトは新しいチャレンジでした。

リーダーを務めるのは、コンシューマーブランド事業部で商品企画を担当する社員で、全体の舵取りや上長との連動を主にリーダーが担いました。ミーティングは1、2週間に1回程度の頻度で集まっていました。通常のルーティンの仕事に加えての業務だったので、時間的にも作業ボリューム的にも苦労したかと思います。

本稿では、そんなプロジェクトを経てリリースされた「ファシオ」のリブランディング戦略が、どのように企画され・実行していったのか。各プロセスを振り返りながら、プロジェクトのすすめ方を紹介していきたいと思います。

現状把握で顧客の声を聞き、方向性を具体化する

リブランディングにあたってまず着手したのが、現状把握です。2019年からリリースの2021年5月までの約2年間で、最終的にはブランドのイメージ調査を1回、コンセプト調査を複数回、インフルエンサーのヒアリングを5回行いました。

ブランドのイメージ調査を行ったところ、非利用者であった20代の方からは「お母さんが使っているブランド」「ドラッグストアではよく見るけれど、どんなブランドかは知らない」「落ちないことを謡っているが、化粧品が落ちないのは当たり前」という意見が出ました。これはかなり衝撃的でした。強みであるはずの「落ちない」という特長は、もはや若年層にとっては当たり前の機能となっていたのです。機能にとどまらず、情緒的な価値まで踏み込んだコミュニケーションが必要。調査から、そんな気づきを得ることができました。

一方、長年愛用いただいている40代の方からは「デザインのパッケージが変わっても機能性が変わらなければ気にしない」という声もいただいていました。

リブランディングで大切なのは、何を変えて、何を変えないかを明確にすること。私たちは、愛用者が最も重視している部分は変えず、パッケージやコミュニケーション方法を大きく刷新するという選択をしました。

ターゲットを明確にして コピーやパッケージを検討する

続いて、改めてブランドがアプローチすべきターゲットを定めていきます。

「ナチュラルメイクが好き」「外からの視線を気にするタイプではない」「自分らしさを大切にする」といった私たちが考える顧客像をもとに、アパレルブランドであれば〇〇を着ている、雑誌ならば◎◎を読んでいる⋯といった細かなところまでペルソナを定めていきました。

この過程で「ヘルシー」で「チャーミング」という新たなキーワードも生まれました。その段階では「ヘルシー」=「健康的でアクティブ」というイメージだったのですが、インフルエンサーの意見などから見えてきたのは、「ヘルシー」=「自分らしくありのままでいられること」という感覚でした。

そこから、自分らしくいられるから、メイクがなじんで、長くつづく。「メイクが落ちにくい」という最大の機能を、今の世代の感覚にフィットさせて伝えるにはどう表現するべきか考え、ブランドコピーを刷新。「きれい、ずっと、つづく。」から、「なじむ、らしさ、つづく。」に変わりました。

また、元々「落ちない」=「アクティブ」という前提でビビッドカラーのパッケージを検討していましたが、くすみカラーのパッケージにするという方向性も定まりました。

最終的にアウトプットしたリブランディングの変更点が【図表1】です。一つひとつの表現の背後には、きちんと機能性が担保されているということも、提案資料では...

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