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宣伝担当者が知っておきたいクリエイティブの基本

ある時はお医者さん。ある時は船頭さん。またある時は…これだ~れだ?

辻 毅氏(ADKクリエイティブ・ワン)

    「クリエイティブ・ディレクション」の極意

    ☑必須アイテムは「正しい決断をするための“明快なモノサシ”」。

    ☑お医者さんの顔で“本音”を聞き、船頭さんの顔でゴールイメージを“具体的に”共有する。

    ☑そして、こんまりさんの顔で「気づき」と「共感性」のあるアイデアを選択する。

クリエイティブ・ディレクターって結局、何する人なの?

つい先日、この質問を義理の母からされて、思わず「うーん」となり、答えに困ってしまいました。広告業界を知らない人に「クリエイティブ・ディレクター」という仕事の内容をどのように話せば理解してもらえるのか?言葉を尽くして説明したのですが、返ってきたのは「ふーん、なんだか大変そうな仕事なのね」。ぼくが考え込んでいるうちに、その話題はいつの間にか終了していました。

そうなんです!「クリエイティブ・ディレクター」の仕事を一言で説明するのは、結構難しいことなのです。ちなみに広告用語辞典によると、「広告表現の企画・立案を行うクリエイティブチームを管理、統括する人。」と書いてあります。

ところがここ最近、期待される役割が変わってきています。

「クリエイティブ・ディレクター」はコミュニケーションの課題だけでなく、経営の課題まで解決できる「経営者のブレーン」として注目を集めているのです。実際ぼくのまわりでも、「クリエイターに直接相談したい」という経営者の方からの相談が増えています。

いちばん重要な仕事 それは「決断すること」

あなたは、「クリエイティブ・ディレクター」と聞いて誰の顔が思い浮かびますか?佐々木宏さんや佐藤可士和さんを思い浮かべた方が多いのではないでしょうか。ぼくはこれまで、数多くのクリエイティブ・ディレクターの方々とお仕事でご一緒してきました。ディレクションの方法は、人それぞれいろいろなやり方があります。でも、「ディレクションがすばらしいなぁ!」と思える人たちには共通点があります。それは、「正しい決断をするための明快なモノサシを持っている」ということです。

たとえば、佐藤可士和さんは、卓越したセンスに注目が集まりがちですが、実際に一緒にお仕事をしてみると判断のスピードと的確なジャッジに圧倒されます。クリエイティブ・ディレクターのいちばん重要な役割は、「正しい決断をすること」ではないかとぼくは思います。

ぼくたちの仕事は、選択と決断の連続です。戦略立案上の重要な判断から、フィニッシュワークの細部の詰めのレイアウトに至るまで、とにかくいろいろなことを決めていかないと仕事が前に進んでいきません。では、正解のないクリエイティブの世界で、どうすれば「正しい決断」ができるようになるのでしょうか?

「クリエイティブ・ディレクターはスーパーマンにならなきゃダメなんだよ」。

ぼくが駆け出しのころに先輩からいただいた言葉です。何のアドバイスにもなっていませんけど(笑)、主戦場がデジタルに代わり、マス広告の企画からWeb動画やSNSなどのデジタル施策の企画まで、クリエイティブ・ディレクターの守備範囲は一気に広がりました。

これにより課題はますます複雑化し、多層化しています。いくらなんでも決めなきゃいけないことが多すぎです。「何から手をつければいいのかわからない」と途方に暮れている新任のクリエイティブ・ディレクターの方も多いのではないでしょうか。

今回は「よりよいアウトプットを導き出すためのクリエイティブ・ディレクションの極意」というテーマをいただきました。精神論や根性論ではなく、できるだけ具体的な解決策を提案したいと思います。①オリエン ②アイデア出し ③企画決定。この3つのフェーズで「正しい決断をするコツ」をお話しします。もちろん宣伝担当部署の方にも役立つ内容となっていますので、楽しんで読んでいただけたらうれしいです。

正しい決断をするために3つの顔を持ちましょう!

図表1 クリエイティブ・ディレクターが正しい決断をするための「3つの顔」

①オリエンの心得

「お医者さん」の顔で話を聞きましょう。

オリエンは「問診の場」です。課題解決の第一歩は、現状把握を漏れなく正確に行うこと。判断する材料がそろっていないと正しい決断はできません。目的や課題は、クライアントのオリエンシートに記載されています。でも、だからと言ってその情報を鵜呑みにしてはいけません。なぜなら、オリエンシートは社内合意を取るためにつくられた資料のため、「建前」が書かれていることが多いからです。

では、「本音」はどうやって引き出すか?解決策はとっても簡単です。責任者の方や現場の方に会いに行って、直接話を聞きましょう。クライアント企業の担当者も悩んでいます。迷っています。いろいろな事情を抱えています。ヒアリングの場は、本音を引き出す場でもあります。話しやすい雰囲気をつくるのもクリエイティブ・ディレクターの役割です。

お医者さんが問診をしてカルテを完成させていくイメージです。とにかくたくさんの情報をインプットして、整理をしていきましょう。ここで宣伝担当者の方に...

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