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宣伝担当者が知っておきたいクリエイティブの基本

デジ・アナ融合の時代 フィジカルメディアは、クリエイティビティで進化する

岡本幸憲氏(グーフ)

    アナログメディア活用の極意

    ☑五感を優しく刺激するフィジカルメディアで、共感を促す。

    ☑関係性を維持・強化するコミュニケーションで、その能力を最大限に活用。

    ☑瞬発力・拡散力のあるデジタルメディアとの自然な補完関係をつくる。

アナログメディアの進化を知り パーパスを再定義する

月刊『宣伝会議』2017年9月号から全6回で連載していた「デジタル時代のプリントメディア」シリーズでは、国内外のブランドがデジタル印刷テクノロジーを活用したコミュニケーションの多様化を進める中で、どのようにフィジカルなメディアを活用し効果を出しているかを複数の事例を基にご紹介させていただきました。

当社は様々なITやデータと連携する印刷プラットフォームサービスを展開しているため“How To”をクリエイター目線で具体的にお話しすることは控えさせていただきますが、多様化が進む市場で双方の“得意”をバランス良く活用し、顧客との関係性を強化するチャレンジをされているブランドの施策を支えるサービサーの視点から、今回はお話をさせていただきます。

私は、読者の皆さん自身がアナログメディアに対する既成概念を変え、まずは最新の印刷テクノロジーが支えられる“コト”を知っていただくことが重要だと思っています。従来の印刷物が悪いわけでも、必要のないモノでもありませんが、いまや印刷の世界は、デジタルを活用し、かつて実現・提供できなかった能力を持ち備えています。

表現力や品質が飛躍的に向上しただけではなく、NFC(近距離無線通信)を埋め込みトレーサビリティやデジタルへの誘導を可能にする用紙や、サステナビリティへの課題解決に貢献できる素材を使用したパッケージなど、従来の印刷には難しかった多様なニーズに応えられるようになりました。

クラウド上の様々なITとボーダーレスに繋げることで、汎用的なデザインを大量に刷ることしかできなかった時代から、可変印刷を利用したカスタマイズやパーソナライゼーションはもちろん、いつでも、どこでも、必要な数量を、再現性高く提供することが可能になりました。印刷の能力は膨らんだのです。フィジカルな能力を無駄なく発揮し、ブランドと顧客を有機的に紡ぐコミュニケーションに活用できるようになりました。

後ほど、ブランドとクリエイターがデジタル印刷を知り、デジタルへのゲートウェイに活用、真のデジ・アナにチャレンジした事例をご紹介させていただきます。

では、アナログメディアのそもそもの優位性とは何でしょうか。デジ・アナの必要性を議論する際に、この特性をいま一度見直し、アナログしかなかった時代の価値観や既成概念から飛び出し、デジタルとの関係性を前提にその利用価値や意義、いわゆるパーパスを再定義することが必要だと考えます。

それはすなわち、フィジカルだからこその質感や形、多様な配布方法(タッチポイント)や返報性の原理、サイズや動線(視線)をアドバンテージに、信頼性の高い情報を発信することが可能で、共感を促す能力が高いメディアだと言い切って良いと思います。正しく活用した際の訴求効果の高さは多くのマーケターやクリエイターが実感していることでしょう。

今後もデジタルを活用したコミュニケーションはより活発に実践され、その時々の変化やニーズに敏感かつ柔軟に対応し成熟していくでしょう。デジタルが持つ最大のアドバンテージは、市場の“多様性”を柔軟に許容し、俊敏に対応できる能力を持ち備えていること。アナログメディアが過去に担ってきた販売促進のシーンでは特にその能力を発揮し、実現できなかった“豊かさ”までを提供しつつ、置き換わっていきます。私もそれが正解だと感じています。

何百年も前に発明された印刷技術は、「文字の文明以来のコミュニケーション革命」と言われ、社会の豊かさと成長に貢献し続けました。社会が、生活が、デジタルという能力を持ち備えたいま、印刷という手段を利用したフィジカルなメディアに求められる新たなパーパスは何でしょうか?デジ・アナ融合というと「デジタルが響かない人にはアナログで?」との意見を多く聞きます。私はそうは思いません。率や売上を上げるためだけに複数のチャネルでプッシュしているだけで、共感が目的ではないからです。

コミュニケーションに多様性という要素が求められるようになったいま、“選んでいただく” “好きになっていただく”という『心』が重要で、自社の売上を増やすための販売促進をプッシュするだけでは共感は生まれないし、紡がれた関係性には繋がりません。

デジタルとアナログは補完し合う 海外事例を紹介

デジタルは何らかの行動を起点に、個々の顧客と双方向のコミュニケーションを瞬時に実現する能力を持ちます。準備されていたコンテンツであれ、動的に提供される情報であれ、顧客が求める多様な情報を、求められている時に場所に関係なく提供することができ、瞬発力のあるコミュニケーションが可能です。例えば...

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