オウンドメディアの秀逸事例
ここでは、メディアを運営し企画の考案も行っている藁品氏、岡田氏の両名が参考にしているという5つのメディアを紹介します。
宣伝担当者が知っておきたいクリエイティブの基本
☑紙メディアの特性を生かし、「読者の時間」をコントロールする。
☑メディアを、「考えを整理する場」と捉える。
☑「個人」と「社会」を結びつけ、生活者の“自分ゴト化”を図る。
グラフィック広告の企画・制作というテーマは場合によっては非常に狭義な職人的なカテゴリーの話に聞こえます。しかし、一枚の紙面に物事をまとめていく作業は現代の広告コミュニケーションにおいて非常に重要スキルの一つであると私は捉えています。
「ひとコマ」にまとめる重要性。新人の頃言われ続けたグラフィック広告の基本「One visual, One message.」の話ですね。私のクリエーションの全てはアートディレクションを基軸に始まり、日々の広告作業やブランディング、製品開発などに関わっています。
とは言え、私を中心に2017年にスタートしたCC INC.は広告デザインだけにとどまる組織ではなく、クリエーティブとコンサルティングの両輪で、世界をより良き方向に一歩でも進めていくことを目指しながら、多岐にわたる分野のお仕事を引き受けさせてもらっています。
我々チームには3つの指針が存在します。
①『広く告げる』=テレビCMや新聞、SNSなどの多岐にわたるマスメディアを横断し、企業の情報や商品・サービスを効率よく届けるための現代的にUP DATEされた広告領域。
②『デザインの使い方』=プロダクトやサービスなどのコミュニケーションの設計から、人の生活に関わる多岐にわたる領域に新しいデザイン視点をインストールしていく。
③『地図をつくる』=中長期的な視点でビジョンを可視化し、ゴールに向けた地図をゼロからつくり出していく共創型のコンサルティングデザインの3カテゴリーです。
今回のテーマである新聞広告(グラフィック)をUP DATEさせていくために必要なポイントを解説しながら、この後埋め込まれていくべき「強みと使い方」についてお話させていただけたらと考えています。
前提として広告を制作し、消費者へ表現として送り届けたいというときには、そこに明確な「目的」が存在しているはずです。そして、その目的となるゴールは、クライアントによってさまざま存在しています。新しい商品の紹介をしたい場合、企業やブランドの意思を伝えていきたい場合など、効果を浸透させていくタイムラインも異なります。
ただし、どんな効果を新聞広告の先に求めても、メディアの特性としての「新聞」のコミュニケーション濃度が最大化するのは掲載日である「今日(当日)」であり、「前日」や「明日」にピークがくることはまずありません。新聞の即時性は今やSNSなどとスピード感だけで比較すると自由度が少なく、弱体化も指摘されていますが、紙メディアの持つ「読者との時間」はコントロール可能。具体的にはアイデア次第で手元の広告をめくるスピードを緩めさせたり、立ち止まらせることができるのです。
SNSの情報と新聞は明らかに性質が異なります。スクリーンに突如現れ、猛スピードで流れていくSNSとは明らかに異なる部分を意識して新聞を使いこなせると面白さや効果は倍増していきます。
私が最近、関わったセイコーホールディングスの「時の記念日」の新聞広告【図1】などはそのルールに則り制作しています。この広告は昨年、新型コロナウイルスが猛威を振う中での第一次緊急事態宣言明けのタイミングで出稿しました。ステイホームにより通勤通学の時間が不要になり、リモートワークで自分側に「人間らしい時間」が戻ってきたと意識し始めた、そのタイミングでしか伝えられないニュース性の高いメッセージを狙い制作しています。
基本的に紙メディアならではの特性を生かし、伝えたいことをしっかりと「言語化」していくプロセスの中で広告の強度は増していきます。この「言語化」のフローは、私たちはどんなタイプの仕事であっても必ず行い、「共通のゴール」をイメージ化していきます。広告というスタイルではなくても、プロジェクト進行であったり、プロダクト開発だったり、どのような場合でも避けては通れないプロセスです。
ビジョンがあってフィロソフィーが世界観を炙り出していく。まずは「言葉」で整理できてさえいれば、一枚の広告としての土台はかなり強固なものになります。
言葉は、裏切りません。例えばそれを新聞広告に転用していく場合、前述の「今日」というニュース性に合致するように、最後は...