自主プレゼンはクライアントへのエール 大切なのは「魅力の『再』発見」
提案に際して、クライアントの真の課題(イシュー)を発見することは重要です。しかし実際問題、オリエンもファーストパーティーデータもなしでクライアントも目から鱗の真の課題を発見することは難易度が高い。そこで、自主プレゼンで「真の課題の発見」より大事なのは、第三者の立場からの、クライアントの企業・ブランド・商品・サービスの「魅力の(再)発見」だと思っています。
メディアプランニングや広告制作など、デジタルの登場で近年、企業の「宣伝部門」の仕事は大きく変化してきました。今号は、広範かつ新しい役割や機能が求められるようになった現代「宣伝部門」の仕事の世界をクローズアップ。広告界の一線で活躍してきたプロフェッショナルと若手宣伝担当者から、宣伝部門の現在地が見えてきます。
はじめまして、LIFULLのCCO(Chief Creative Officer)の川嵜と申します。私は今、全社的なブランド戦略、ブランドマーケティングから既存・新規事業のブランドデザイン、プロダクトデザインといったコミュニケーションデザイン、PR領域を統括しています。そして先端テクノロジーを活用したR&Dなど様々な仕事に携わっている立場から、宣伝部門におけるクリエイティブディレクションをテーマにお話ししたいと思います。
クリエイティブの話に移る前に、昨今のマーケティング環境下で欠かせなくなってきている、ブランディングやデザインについて補足しておきます。2018年に経済産業省の「『デザイン経営』宣言」発表に象徴されるように、企業の競争力においてブランドやデザインが重要視されています。背景のひとつとしては、日本企業が目を向けがちなテクノロジーや機能、あるいはサービスの仕組みといった特徴は模倣が容易なために商品の差別化が難しく、価格競争に陥りやすいという理由があります。
こうした背景もあって、宣伝部門に対してブランド価値を向上させるような広告宣伝、ブランディング活動が求められるようになったわけですが、適切なブランディングを実践するためにはクリエイティブディレクションが欠かせません。
クリエイティブディレクションは多義的な言葉ではありますが、当社では、その定義を広告や表現に留まらないものと考えています。広告主企業の宣伝部門におけるクリエイティブディレクションとは、事業や商品そのものから、プロモーション、PRといったコミュニケーション活動全般を、統合的かつ横断的に方向性を示したり、統括していく仕事だと捉えています …