自主プレゼンはクライアントへのエール 大切なのは「魅力の『再』発見」
提案に際して、クライアントの真の課題(イシュー)を発見することは重要です。しかし実際問題、オリエンもファーストパーティーデータもなしでクライアントも目から鱗の真の課題を発見することは難易度が高い。そこで、自主プレゼンで「真の課題の発見」より大事なのは、第三者の立場からの、クライアントの企業・ブランド・商品・サービスの「魅力の(再)発見」だと思っています。
広告が生活者に届きにくい時代。生活者に関心を持ってもらう、あるいは自分ごと化してもらためには工夫が欠かせません。そのひとつとして有効なのが、生活者が興味関心のある切り口で、かつ価値を伴った形で企業が情報発信する手法、「コンテンツマーケティング」。グローバルでの潮流も踏まえながら、オウンドメディア/外部メディアを活用したコンテンツマーケティング実践のポイントを、プロフェッショナルが解説します。
皆さんは、Digitally Native Vertical Brand(DNVB)という言葉を耳にしたことがありますでしょうか。DNVBは、1980年代から2000年初頭に生まれたデジタルネイティブとされるミレニアル世代以下の消費者に対して、Webを介してストーリーテリングの手法で商品の販売を行う、インターネット時代のブランドを指します。代表的なDNVBとしては、サブスクリプション契約をすると毎月新しい髭剃りが届くDollar Shave Club、無料で複数のメガネを試着し欲しいものだけを購入できるWarby Parkerなどが挙げられます。
近年、欧米ではDNVBの躍進が目覚ましいですが、中間流通を排除したビジネスモデルDirect-to-Consumer(D2C)であるDNVBに、まだ一般流通が主戦場であるブランドが見習う部分はあるのでしょうか。
DNVBは多くの場合、中間流通コストの削減により、従来のブランドと比較してコスト的優位性を有しますが、消費者へのアピールは価格や商品のデザイン・性能にとどまることなく、そのブランドが実現する「ブランド体験価値」を中核として展開されます。
例えば、メガネを販売するWarby Parkerは、「Buy a pair, Give a pair」という慈善団体を通じての発展途上国への寄付を行うプログラムを実施しました。同社は社会に良いインパクトを与える「Social Good」なブランドとして、社会貢献に積極的なミレニアル世代をメインターゲットとして立ち上げられましたが、マーケティング戦略もそのブランドコンセプトをコアに組み立てられています。
特徴的サービスである自宅に試着用の5つのメガネフレームが送料無料で届く「Home Try-On」は、利用者が「#warbyparker」といったハッシュタグをつけてSocial Goodなブランドのメガネを試着する自分のセルフィーをSNSでアップするというSNSでの拡散を後押しする仕組みです。これを支持する多くのユーザーがエバンジェリストとなり、同社を宣伝しました。
従来のブランドによるWebの活用は、できるだけ多くのユーザーに商品について知ってもらう、もしくは購入してもらうといった「モノ」にフォーカスした設計が一般的でした。これに対し、DNVBではブランドの提供する「コト」、つまり体験価値をターゲットのユーザー層に語りかけ、共感してもらうことにより、SNSでの拡散などの次のアクションが喚起され、結果的に顧客を巻き込んだ形でブランドが共創されていくのです。図1は従来のブランドコミュニケーションと、DNVBのコミュニケーションを比較した表です。
DNVBの「共感を得るコンテンツ」に、ユーザーはどのように出会うのでしょうか。13億超のWebサイトが存在すると言われるこの情報過多社会においては、自社のWebサイトや公式SNSなどに上げるだけでは、コンテンツにユーザーを集客することが非常に難しくなってきています。
DNVBは、この課題を自社のオウンドメディア、従来有料課金型のペイドメディア、そしてFacebook、Instagram、YouTube、Twitterといったソーシャルメディアを、図2のように活用することにより解決します。
まず、DNVBはブランド体験価値を体現するコンテンツを作成の上、オウンドメディアや自社の公式SNSなどに掲載します。しかし、これだけではなかなか多くのユーザーに見つけてもらうことは難しいので、「火付け役」として、ペイドメディア、すなわち有料広告で最初にコンテンツを見てもらうユーザーを集めます …