今月のテーマ:アイデア発想・企画力を養う
生活者の行動が複雑化した現在、実益性と実現性を兼ねた企画を設計するためには、ますます「発想力/企画力」が必要とされる時代になっています。このことは宣伝担当者やクリエイターに限らず、これからのAI隆盛の時代を考えれば、あらゆるビジネスパーソンにとっても他人事とは言い切れません。個人と組織、それぞれのレイヤーで優れたアイデアを発想するための方法論を、プロフェッショナルが解説します。
- 企画は「幸福に向かう意志」。幸せな未来を見定めて、そこに向かう「→(ヤジルシ)」を考えること。
- 3つの接続詞「そもそも」「たとえば」「つまり」で考えることで「→」が見えてくるようになる。
- 自分の関心ごとについて企画できる機会はそう多くない。いかに自分ごと化して企画できるか、といった姿勢が重要。
アイデア発想・企画の3つのポイント
現状を変えていきたい気持ちが企画へと向かわせる
あなたが今、この文章を読んでくださっているということは、「企画」に興味がある方なのだと思います。「企画」や「プランニング」という名称が名刺に書かれている方もいれば、今は違うけれど将来、企画職に就きたいという方も、その予定はないけれども企画の力は付けたいという方もきっといますよね。幅広い職種の方が「企画力」を求めているという肌感覚が私の中にあります。
2015年から、横浜みなとみらいのBUKATSUDOにてはじめた連続講座「企画でメシを食っていく」。半年間、全12回にわたる企画の学校です。参加者の職種は多様性に富んでいます。新聞社の記者、電車の運転士、高校教師、農家、イラストレーター、営業職、企画職などさまざま。エントリーの際の文章を読むと、みんな一様に、「企画を通じて、現状の自分を変えたい」という気持ちがあることがわかります。
時代が急速に変化していく中で、企画職であろうがなかろうが、心に立ち込めていく不安。これまでを大切にしながらも、これからを変えていきたい。そんな強い思いが企画へと向かわせるのではないかと考えています。いくらAIが浸透していき、作業を負担してくれても、まだまだ、未来を企画してくれるわけではないでしょうから。
企画は特別なものではない "するかしないか"
「企画」とは何でしょうか?この質問に即答できる人は少ない気がします。辞書を引くとこう書かれています。「実現すべき物事の内容を考え、その実現に向けての計画を立てること。立案すること。また、その計画や案」。なるほど、という感じですかね。その意味を把握しつつ、私の中ではこのように定義しています。企画とは、幸福に向かう意志。とてもシンプルに言うと「→(ヤジルシ)」だと考えています。今、私はここにいる。これから、こうなったら良いなという幸せな未来を見定める。そこを目指し向かっていく意志そのものだと思うのです。
哲学者のアランが「幸福論」にて、「楽観は意志。悲観は気分」という言葉を残しています。どんな状況であっても、未来を楽観していく。私は思います、企画は「できるできないではなく、するかしかないか」だと。決して「企画」は特別なものではない、という前提のもと、書き進めていきます。あなたにとても関係のある行為です。
たとえば、仕事の話だけではなく、今日の晩ごはんをどうするか、週末はどこに行こうか、休暇は何をして過ごそうか、身近なところに企画はありますし、人生は企画の連続と言ってもよいと考えています。企画ができる、つまり「→(ヤジルシ)」の使い手になれば、幸福へと進んでいけるはずです。
私が10年ほど続けてきているコピーライターという仕事は、当たり前のようにみんなが使っている言葉を用いながら、目指すべき幸福を考え、言葉に「→(ヤジルシ)」を加えていく、「言葉の企画」だと考えています。
平たく言えば、コピーライターの仕事は、「ものは言いよう」を考えることです。「ピンチ→チャンス」「雨が降る→虹が見れる」「人の少ない街→閑静な住宅街」など、現状を捉え、ポジティブな考えを持ち、言語化していきます。企画の根幹は、言葉にあると思っています。
ちなみに私は、生活をしている中で「これは、ものは言いようだ!」と思ったらすぐに、スマホのEvernoteにメモをとる習慣付けをしています。プロとは、無意識を意識してできる人。感覚的に良いと思ったことに対し、意識して言葉にするように工夫しています。それでは、どのように「→(ヤジルシ)」を考えられるようになるのか、思考のフレームを記していきます。
「本質」から企画が生まれる 3つの接続詞が思考のヒントに
企画しようと思って、いきなり企画ができるわけではありません。自分の「経験」から「本質」を見つけ出し、そこから「企画」を生み出せると考えています。思考のフレームは3つの接続詞を使います。それは、「そもそも」と「たとえば」と「つまり」です。まず「そもそも」です。それは何者なのかを考えていきます。
ひとつの例として、「アイドル」というテーマを与えられたとします。繰り返しになりますが、いきなり「企画するぞ!」と企画案を考えはじめるのではなく、今いる現在地を確認しましょう。「そもそもアイドルとは何だろう?」という問いからはじめます …