今月のテーマ:BtoB企業におけるコーポレートブランディング
国内市場を対象に、人的営業によるセールス活動が中心だった、これまでのBtoB企業においては、企業認知の獲得やブランドイメージ醸成は重要視されてきませんでした。しかし海外に進出し、幅広いステークホルダーとの共創が求められている状況下で重要な位置づけになってきているのがコーポレートブランディングです。今号はBtoB企業にスポットを当て、コーポレートブランディングのプロフェッショナルが、そのポイントとノウハウを解説します。
- コーポレートブランディングが目指すのは、イノベーションを生み出し続ける企業文化づくり。
- 企業のWhat to sayを明確化するには、企業のIdentityと提供するValueの2軸から検討することが有効。
- スローガンの有言実行には、従業員の一人ひとりの意識と行動変革の変革に取り組むことが重要。
BtoB企業のコーポレートブランディングのポイント!
コーポレートブランディングとは根幹的なブランド戦略
2008年に、宣伝会議さんが「第1期BtoBブランディング講座」を開催したとき、講師のひとりとしてお手伝いしました。もう10年以上前のことですが、そのときいただいた講座のパンフレットに、「人材採用・営業支援・IR活動に直結!」というコピーが添えられていました。概ねこれが、当時の「BtoB企業のブランディングニーズ」を表したものだったでしょう。
その頃にはもう「ブランディング」という言葉が人口に膾炙するようになっていた訳ですが、その大半はBtoC企業におけるマーケティング支援を目的とするブランディングでした。
コーポレートブランディングは、マーケティングはもちろん、営業やIR、リクルート…といった個別の課題を包括する、より上位の、より根本的なブランド戦略です。広報部門だけでなく経営企画部門、さらにはトップマネジメントがカウンターパートになりますから、「経営支援のブランディング」と言ってよいでしょう。その意味では、CI(コーポレート・アイデンティティ)と非常に近いとも言えます。
長くCIのコンサルティングから表現開発までを手掛けてきた立場からすると、BtoC企業とBtoB企業に本質的な違いはなく、コーポレートブランディングについても同様です。
"ブランドドリブングロース"のスパイラルが基本構造
コーポレートブランディングの基本構造について解説していきます。
そもそもコーポレートブランディングとは何なのでしょうか。企業とは、社会の中にあって、社会との価値交換を通して成長していこうとする存在です。社会から調達した経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報…)を、その企業の理念やビジョンに基づき、その企業ならではのやり方で組み合わせて、価値を創造する。その価値に対する社会(市場)からの評価(対価)として、新たな経営資源を獲得する。この価値交換を、より円滑かつ効率的に行うための目印(シンボル)が「コーポレートブランド」です。
そして、コーポレートブランドを有効に活用した(広義の)コミュニケーションによって持続的な成長を図っていく"ブランドドリブングロース"のプロセスが「コーポレートブランディング」、ということになります(図)。
1.企業の意志と課題を理解する ──企業文化の変革へ
その最初の仕事は、企業の「意志」=理念やビジョン(経営計画)を理解し、それを実現していくための「変革課題」を抽出することです。従業員の一人ひとりが、自社の理念やビジョンを理解し、自分ゴト化し、それを実践するような意識と行動の変革に取り組むことで、初めて目指す姿が実現されます。イノベーションを生み出し続ける企業文化づくりこそが、コーポレートブランディングの究極の目的と言っても過言ではありません。
企業のアイデンティティは普遍的なものですが、環境変化が加速し続ける中、ビジョンは相応の頻度で刷新されることが求められ、それを契機にリブランディングに取り組むケースが増えています …