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宣伝担当者が知っておきたいクリエイティブの基本

ラジオCM職人が伝授する!音声コンテンツ制作の「3つの基本」

山本 渉氏(電通)

今月のテーマ:音のコミュニケーションとクリエイティブ

映像や視覚的要素と並び、あらゆる広告表現にとって欠かせない要素であり続けてきた「音」。昨今のスマートスピーカーや「radiko」の登場により「オーディオアド」を耳にするシーンは確実に増え、広告・マーケティングにおいて、いま注目の分野と言えます。今回は4マスメディア唯一の広告費増の「ラジオCM」と、Web動画で可能性が広がる「広告音楽」のプロフェッショナルが、クリエイティブディレクションのポイントを解説します。

    ラジオCM制作のポイント!

  • ラジオCMは、「言葉」「音楽」「効果音」「間」の4つの構成要素を時間軸にレイアウトすること。
  • 「効果音」や場面設定を工夫することで、絵を想像できるくらい状況を分かりやすくすることが重要。
  • 登場人物の設定を具体化することで、ナレーションにリアリティを持たせる。

映像を伴わないラジオは"終わった"メディアなのか?

デジタルメディアの勢いに押されて、ラジオは「アナログで古臭くて衰えていくメディアなのでは?」と捉えられていた時期もありました。それが今、スマートスピーカーなどデバイスの普及、radiko、Spotify、Voicyなどのプラットフォームの発達により音声メディアが盛り上がりをみせ、再び注目されるメディアとなってきています。

ラジオはテレビと異なり、ビジュアルがない分、「表現の制約が多いのでは?」「テレビの補完メディアにしかならないのでは?」といった考えがあります。そのような先入観を一度取り払うことが、音をマーケティングに活かす第一歩となります。

伊藤亜紗さんの『目の見えない人は世界をどう見ているのか』という本の冒頭に「見えないことは欠落ではなく、脳の内部に新しい扉が開かれること」とあります。ラジオも同様で、映像がないことを欠落と捉えるのではなく、新しい可能性の入り口としてみると、音声コンテンツがより奥深いものになってくるかもしれません。

自分は入社以来、"ラジオCM職人"と呼ばれるほど大量のラジオCMを制作してきました。また、10年前からメディアのラジオ部門を兼務し、radikoや番組開発など幅広く音声コンテンツに携わってきました。この場ではクリエーティブとメディアの2つの視点で、ラジオの今と未来を深掘りしていきます。

寄り添い、深く伝える ラジオCMの特性を理解する

著名な映画音楽の作曲家であるハンス・ジマー氏は「ホラー映画を見た時に恐怖のあまり目をふさぐが、それは間違っている。本当は耳をふさぐべきなのだ」という発言をしています。映像の陰に隠れがちな音ですが、実は強い効力を持っているのです。

ある実験で、同じ内容の情報をテレビ(映像)とラジオ(音声)で伝えて、その後に情報から得たキーワードを出してもらったところ、ラジオの方が数多くでてきました。例えば、「犬が公園で走っている」という情報を音声で聞くと、人によって思い浮かべる犬はさまざまです。昔飼っていた犬や、ちょうど数分前に見た犬など自分の記憶とつなげます。この、体験とリンクして記憶に残すという「自分ゴト化」がラジオの最大の強みです。テレビは広くみんなに、ラジオは一人ひとりに届ける、と言われる所以でもあります。

とあるタレントさんのエピソードですが、テレビを観ている人には「ファンです」と声をかけられ、ラジオを聴いている人には「あの回のあのエピソード面白かったです」とより具体的な話で声を掛けられるそうです。

つまり広さではなく、深さがラジオにはあるのです。ブランド認知度は上がった、でも購入意向が上がらない。調査を行ったところ親近感のスコアが低かった。エンゲージメントを高めたい。といった場合にラジオは良い手段かもしれません。

ラジオCMおよび音声コンテンツ制作のポイント

コピー、ネーミング、キャンペーン構築の指南書は数多く見受けられますが、なかなか音に特化したものはありません。ここで述べるポイントは、広告会社や制作会社に所属して企画を提案する側も、クライアントサイドで提案を受ける側も、知っていて損はない基礎知識です。

さまざまな研修や宣伝会議のラジオCM制作講座などで教えてきた、ラジオCMの留意点をシンプルに3つのポイントにまとめました。

Point 1「4つの要素で立体的に」

ラジオCMは4つの要素から成り立っています。「言葉」「音楽」「効果音」、この3つの要素はすぐに思いつきますが、もうひとつ大切なのは「間」です。

ラジオCMでは特に、限られた尺にいっぱい情報を詰め込んでぎっしり書いてしまいがちですが、実は間があることでくすっと笑えたり、良い言葉にぐっときたりするものです。制作の際にはぜひ間を意識してみてください。

この4つの要素を時間軸にレイアウトしていく作業がラジオCMです。意外とアートディレクターがラジオCMが上手い、といわれるのはこのレイアウト能力が高いからかもしれません …

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