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宣伝担当者が知っておきたいクリエイティブの基本

「目的に沿ったデータか」を見極めることでデジタル・クリエイティブは進化する

サイバーエージェント 中橋 敦

テレビCMからソーシャルメディアの投稿まで、消費者との接点が格段に増えたことで、おのずと広告・コンテンツ制作が必要とされる場面も、そのバラエティが広がっています。担当者自らに制作スキルが求められるもの、外部のパートナーのディレクション力が求められるものがありますが、本特集では双方を織り交ぜながら、1年にわたって、特にアウトプットの完成度を高める実践的ノウハウ・考え方を解説していきます。

デジタル広告のクリエイティブの基本

デジタルの進化や、多様なデバイスの普及により、デジタル広告も種類を増やしています。届けたい情報を生活者に適切に届けるには、デジタル広告の特性を理解し、目的に合わせて使い分けることが重要。ユーザーや接触ポイント、メディア理解を深めるためにはどうしたら良いのか。また、デジタル広告の特性を生かしたクリエイティブのポイントとは。デジタル広告の特徴やクリエイティブ制作のポイントを解説します。

    デジタル広告のクリエイティブのここがポイント!

  • 企画段階でデータ計測可能な「成功の定義」を設定したうえで、クリエイティブ開発を行うべし。
  • 目の前のデータがゴールや目的に沿っているかどうか、常に自問自答すべし。
  • ゴールや方向性の擦り合わせを徹底するため、データを読み解く際の共通言語を持つべし。

データによる効果計測を前提に企画の「成功を定義」する

多様なデバイスの普及や、デジタル化などの環境変化により、生活者にとってデジタル環境テクノロジーは欠かせないものとなりました。生活者との重要なタッチポイントのひとつとなったデジタル広告には多様な種類がありますが、基本的にデジタル上で企画するものは、トラッカブル=データを計測できることを基本にしています。

それゆえ企画段階で、データを計測できる状態にする=「何を目標にし、どういう効果を目指していくのか」という企画の輪郭をはっきりさせることが重要になります。

具体的には、まず達成すべきゴールの設計から入ります。次に「定めたゴールに到達するためのKPI=成功の定義」を設定。そして、そのKPIを達成するための戦略や手法はどういったものになるのかを、ゴールから逆算して組み立て、クリエイティブを開発していきます。

企画の中心になるのは仮説ですが、この仮説の精度を高めるには、過去に類似する企画があれば、そのデータを参考にすると良いと思います。

もし過去に例のない企画を実施するのであれば、ある程度想像して仮説設定をする必要があります。クライアントと対話を重ねることはもちろん、まったく違う企画でも、少しでも近い要素があれば取り入れます。

ゴール到達を目指す上で、要になるのはKPIのトラッキングです。通常、データをトラックできるポイントは、ユーザーが何らかのアクションをするポイントになります。そこで、ユーザーに起こして欲しいアクションに沿ってKPIポイントを設定するとよいでしょう。

図表 企画段階ですべき項目

データを見て即断即決できるよう複数プランの事前準備が不可欠

次に、デジタル広告のデータをどう生かすかについてお話しします。企画を立案したら次は施策の実行・運用段階に入りますが、リアルタイムに近い形で効果を可視化できるのがデジタルならではの強みなので、データを基に一度設定したゴール、KPI、戦略・戦術を状況に合わせて見直す必要があります。ここではキャンペーンの際に企画したデジタル広告を例に説明をしていきます。

定めたKPIのデータを毎日見ることが大切です。そしてそのデータを基に、次のアクションをいかに早く実行できるかが勝負。常に一歩先を読んだ戦略を立てることも必要となります。

もし企画段階で定めていた目標値に現状の数値が達しておらず、厳しい状況になったときは、思い切って別のプランに切り替えることもあります。PDCAを回すのは当然ですが、最も効果的なアクションは何なのか、用意しておいた複数のプランの中で何が適しているのか、データを見たうえでスピーディーに見極めることが不可欠なのです。

なお、別に用意する複数プランやクリエイティブの制作については、あらかじめスケジュールを立てておいた方が良いでしょう。例えば、データを基に「○月○日までに目標数値に達しなかったらプランBを発動しよう」といった形で、企画段階で決めてしまいます。

途中で慌てて改善案を考えてもどうにもならないことが多いので、企画段階で仮説を立て、スケジュールに沿ってプランを考案することが必要です。

「目的達成に向かったデータ」か常に立ち返りを

これまで述べてきたように、デジタル広告で成果を出すためには真摯にデータと向き合うことが必要になりますが、一方で難しいのはデータを鵜呑みにしないようにしなければいけないということです。

バナー広告のクリエイティブを例に考えましょう。CTRが高いという結果が出ていたとします。CTRが高い=良いクリエイティブと判断してしまわず、目的達成に向かっているのか、常に立ち返らなければなりません。

なぜなら、例えばブランディングが目的で「自社ブランドをよりクールに思ってもらおう」と打ち出したバナー広告の場合、CTRがそのブランディングに適したKPIだとは言い切れないからです。単にバナー広告が目立つ、わかりやすい、という理由でCTRが高い可能性もあります。本来ブランドが向かっていきたい方向とずれていることも考えられるのです。

つまり、そのデータを見るポイントが合っているのかを突き詰めて考えることが必要だということです。特にブランディング領域は、まだまだトラッキングできないデータが多くあります。的はずれなデータを見ても意味がないので、見るデータが目的にかなっているかを意識することは、クリエイティブを落とし込むうえでも必要なスタンスだと思います。

データを理解するためにはその裏側の事象を見る

さらにデータを見るうえでは、その結果の裏側の仕組みも考える必要があります。例えば、CTRもCPCも全て良いバナークリエイティブ群があったとして、なぜ良いスコアが出たのか、その具体的な仕組みを理解しないと、クリエイティブをより良くすることにつながっていきません ...

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