テレビCMからソーシャルメディアの投稿まで、消費者との接点が格段に増えたことで、おのずと広告・コンテンツ制作が必要とされる場面も、そのバラエティが広がっています。担当者自らに制作スキルが求められるもの、外部のパートナーのディレクション力が求められるものがありますが、本特集では双方を織り交ぜながら、1年にわたって、特にアウトプットの完成度を高める実践的ノウハウ・考え方を解説していきます。
動画制作ディレクションの基本
一言で「動画」といっても、その用途や目的によって活用シーンはさまざま。多様なデバイスも普及し、視聴環境が整ってきている今、生活者の日常に動画は身近なものとなっている。多くの動画が日々配信される中、自社の動画を見てもらうにはどうしたら良いのか。多岐にわたる活用シーンに適した動画を制作するためのディレクションのポイントとは。
- 自社で制作する場合は、いかに見る人に共感してもらえるかが課題。
- 動画制作のパートナーには、商品の訴求ポイント、どこまで依頼するのかをあらかじめ伝える。
- リスクマネジメントの視点を欠かさず、表現は多角的に検証する。
動画制作ディレクションのここがポイント!
動画活用でSNSでも拡散する 商品の新しい使い方を紹介
筆記具メーカーにとってロングセラー商品こそが収益の柱。とはいえ、筆記具はやはり学生さんを中心とした若者の消費拡大を図りたい商材です。その上、新しい機能を搭載した商品は若い方に試していただける割合が高い。そこで広告・プロモーション用として若年層に認知を広げるための動画に注目をしています。
筆記具はさまざまな機能的進化を遂げています。そうした新しい使い道を理解してもらうためにも動画活用は欠かせないのです。
また、SNSにおいては動画の方が見られやすく、拡散もしやすい。そのため商品独自のユニークさが表現できますし、興味を持ってもらえた方がより詳細な情報を得やすい点にもメリットを感じています。
目的に合わせて動画を配信 媒体によっては自社制作も
私は主に各担当者が制作した動画を自社サイト・YouTubeチャンネルに登録・管理を担当しています。どの商品のどんな内容を伝えるかによってメディア選択を行いますが、その内容は大きく「プロモーション用」と「機能説明用」とに分かれます。
「プロモーション用」に関して言えば、ある程度の期間、展開するものなので、SNSのようなフロー型のメディアよりも、YouTubeにアップしたり特設サイトをつくってそこに動画を置いたりといった活用になります。
「機能説明用」の動画はYouTubeにアップするのはもちろん、拡散を狙うのが目的なので、SNS(主にFacebookとTwitter)を選んで配信をしています。
SNSで配信する動画は、それほど高い完成度は求められず、ラフな感じのものが好まれる傾向にあるため、社内で自分たちで撮影する場合もあります。その場合のポイントは、宣伝っぽさを消し、あえてラフな感じで撮ること。
なぜかといえば、SNS上は広告的なものが無視されやすいからです。特に若い方は自然と広告とそうでないものを識別するので、見てもらうためには宣伝っぽさを消す努力が必要になります。
ありがたいことに、ユーザーや販売店が当社商品の動画を撮ってSNSにアップしてくれる場合もあります。彼らのアップした動画から「こんな使い方があったのか」と教えられることも多いですし、そういった時は当社の公式Twitterでそのままシェアすることもあります。
今注目していて、今後取り組んでみたいSNSがInstagramです。ユーザー層も増えてきていることや、発信力のある若い女性の利用者も多い。特にInstagramにおいては手書きの情報発信がとても多いんです。書き文字や描いた絵などを載せると、自分らしさや面白さが表現できる、という理由でとても人気があります。そういう意味では筆記具と、Instagramの相性はとても良いと言えます。
筆記具は色のバリエーションが多いし、可愛らしいものも多いので「こんなものを使ってみた」「描いてみた」という写真に当社のペンが写り込んでいる。その上、わざわざハッシュタグで商品名を入れてくれる方も多い。このようにInstagramは消費者の方がそれぞれに宣伝してくれる効果があるので、非常に注目しています。
当社ではこうした動画配信の効果測定については再生回数やシェア数、「いいね!」数、コメント内容などを重視しています。プロモーション時にはプレゼントキャンペーンも同時に行うことが多いので、応募数の変化も注視します。最終的な目標はやはり、売上とブランド認知度の向上になると思います。
また、お客さま接点として店舗が重要な当社のような商材の場合、店頭での動画活用にも取り組んでいます。電子POPも活用していますが、これは動画を流すために、電子POPを販売店に貸し出し、店頭のメディア化を図っています。
そして商品をなるべく良い場所においてもらい、見てもらう、お客さまに足を止めてもらうことを目的にしています。これによって実際に足を止め、機能説明を見ることで購入につながる場合も多くあります。さらに小売店の方にメーカーの本気度、「この商品には特に力をいれていますよ」ということを伝えることもできます。
メディアを問わず、自社制作する場合は、いかに見る人に共感してもらえるかが課題です。というのも、どうしてもメーカー視点での情報発信になりがちなためです。そのため、ユーザーやお店がつくってくれた動画も参考にします。また、なるべく「これが受けそう」とか「受けないだろう」といった先入観を持たないようにしています。あれこれ考えずに数をつくって試してみるのが自社制作のメリットなので、続けながら精度を高めていくのがよいと考えています。
クリエイターに依頼をするには「依頼の幅」を先に伝える
先ほどは自社制作する場合の動画制作についてお話をしましたが、基本的に外部発注がメインです。プロモーション用には広告会社を挟みますし、店頭用の機能説明中心のものは直接制作会社に制作を依頼することもあります ...