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宣伝担当者が知っておきたいクリエイティブの基本

ネット上の広告の種類を理解しクリエイティブ制作に生かす

サイバーコミュニケーションズ 鎌ヶ江 徹

テレビCMからソーシャルメディアの投稿まで、消費者との接点が格段に増えたことで、おのずと広告・コンテンツ制作が必要とされる場面も、そのバラエティが広がっています。担当者自らに制作スキルが求められるもの、外部のパートナーのディレクション力が求められるものがありますが、本特集では双方を織り交ぜながら、1年にわたって、特にアウトプットの完成度を高める実践的ノウハウ・考え方を解説していきます。

デジタル広告のクリエイティブの基本

デジタルの進化や、多様なデバイスの普及により、デジタル広告も種類を増やしています。届けたい情報を生活者に適切に届けるには、デジタル広告の特性を理解し、目的に合わせて使い分けることが重要。ユーザーや接触ポイント、メディア理解を深めるためにはどうしたら良いのか。また、デジタル広告の特性を生かしたクリエイティブのポイントとは。デジタル広告の特徴やクリエイティブ制作のポイントを解説します。

    デジタル広告のクリエイティブのここがポイント!

  • ネット上の広告の主なフォーマットについての特長を理解し、使い分けるべし。
  • 接触ポイント、ユーザー、メディア特性を意識、考慮して制作、運用すべし。
  • メディアやフォーマット特性を理解し、シナリオや対話設計の中で機能させていく視点が必要。

ネット広告の分類における主要なフォーマットの種類

まず、ネット広告と一言で言ってもさまざまなものがありますが、主要なフォーマットごとに分類すると、リスティング広告、ディスプレイ広告、ネイティブ広告、ビデオ広告などに分けることができます。それぞれの特性について紹介します(図表)

図表 ネット広告の主要なフォーマット
それぞれのフォーマットに適した広告制作が必要とされる。

● リスティング広告

ユーザーの検索するキーワードに連動して広告を表示する手法で、主に見込み顧客の刈り取りの役割に位置づけて考えることが多い広告手法です。ひとつの商材においても効果向上のために膨大なキーワード、テキストクリエイティブを設定して、管理、改善運用をしていきます。

リスティングのコピーライティングにおいては、クリエイターやコピーライターが制作するよりも、SEM、SEO専門の運用担当者が行うケースが多くあります。なぜなら、ユーザーの顕在化したニーズに対して、限られた文字数で具体的な魅力やポイントを表現する作業は、訴求商材の理解に加え、テクニック、ナレッジ、個別キーワードに関する情報などを多く要し、さらにそれを随時改善運用していく必要があるためです。

● ディスプレイ広告

Webメディアやアプリ上に表示されるバナーなどの広告です。静止画バナーのほか、動画やアニメーションを含んだ表現や、広告枠が拡大したり、クリックやタップ操作によるインタラクティブ性をもったリッチアドと呼ばれる広告表現も含まれます。こうした高度な表現は、以前はFlashにより制作されましたが、スマートフォンの普及とブラウザ環境の変移により、現在はHTML5によるクリエイティブへと移行しています。

ディスプレイ広告においては、かつて枠ごとに価格が設定され予約買い付けをし、掲載をするという予約型が主流でしたが、現在は、オークションによる運用型が主流となっています。

運用型においては、ユーザー行動や興味関心等の属性による細やかなターゲティング配信を行い、広告効果の最大化のために、ターゲティングの設定・クリエイティブ表現を調整していくことが必要です。

制作において、静止画バナーは、デザイン会社・Web制作会社など、多くの会社で対応しており、外部への制作発注を行う場合は、グラフィックの表現力に重きを置くのか、獲得効率を重視するかなどにより、デザイン会社、運用知見を豊富にもった会社など、制作依頼先を検討する必要があります。

HTML5バナーについては、かつてのFlashのような業界標準の制作環境、制作規定がまだ完全には整っていません。主な制作ツールとして、Adobe社のAnimate CCやGoogle社のGoogle Web Designerなどがありますが、配信メディア、プラットフォームによって個別で規定が異なるため注意が必要です。また制作会社によって制作環境、体制、知見に差があるため、外部委託をする際には、配信メディア、規定、実施したい内容や表現を伝えた上で実現可否を確認する必要があります。

さらにディスプレイ広告では、配信技術の進化によって、ユーザー属性や行動データ、エリア、天気などの外部データを元に訴求内容、表現をリアルタイムに出し分けることのできるダイナミッククリエイティブという手法も出てきています。

こうした中で広告制作においては、単純なデザイン制作スキルだけでなく、メディアプランニング、配信技術の理解、制作・構築を複合的に配慮して進める必要がでてきます。

● ネイティブ広告

媒体社のコンテンツと一体化した形態をとり、日本インタラクティブ広告協会(JIAA)では「ユーザーの情報利用体験を妨げない広告」という定義を出しており、ニュース記事やキュレーションメディアの記事一覧、SNSのタイムラインに表示される「インフィード広告」もネイティブ広告に含まれます。

インフィード広告に使われる画像は、画像内に広告訴求文言を盛り込んだ表現は避けられ、大半がイラストや写真のみで、訴求内容のイメージ・世界観を伝える挿絵的に扱われます。

FacebookやInstagramにおいては、画像内を占める文字要素の割合が20%を超過している場合、掲載制限されるような仕様が設けられており、他メディアでも類似の仕様を定めていることが多くなっています。

インフィード広告の制作においては、そうしたフォーマットの違いや媒体規定の準拠の必要性から、ディスプレイバナーの流用がしづらく、別途制作をする必要があります。その際は単純な仕様上の配慮のみでなく、各メディアのユーザー特性、世界観を意識した表現に配慮することも重要です。

例えばInstagramは、写真をベースとしたファッションやライフスタイルなどの情緒的な投稿が多いメディア特性のため、広告においても視覚的に訴えるよう演出した表現を行うことでユーザーに違和感なく情報を伝えることができます。

● ビデオ広告

YouTubeをはじめとする動画共有サービスや、テレビ局のWebサイトの動画コンテンツ視聴時に掲載されるものの他、FacebookやTwitterなどのSNSでも多く取り入れられてきています。

ビデオ広告は、その表現力の豊かさから、テレビ視聴からスマートフォンを中心とした動画メディアへシフトする若者層へのテレビCMに代わるブランディング効果が期待されます ...

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