- コピーが自社や商品、さらにそこに込められた想いに合っているのかという点を重視すること。
- コピーライターの方に商品のコンセプトや想いを伝えるためには、当社自体の歴史を全て知ってもらうこと。
- リスク管理は、二重三重のフィルタをかけるべし。
コピーライティングのここがポイント!
商品に込めた想いを表現するコピー
私は普段、主には「ポカリスエット」と「カロリーメイト」、「賢者の食卓」などのテレビCMやグラフィックなどの企画制作を担当しています。その中で、コピーライターの方と一緒にお仕事をする際の流れや意識していることをお話しします。
まず、当社ではクリエイティブの企画時にどのコピーライターの方とお仕事をするか検討するに際して、その方の過去の実績などを見せていただくことが多いです。企業によって重視されている点はさまざまあると思いますが、当社の場合は中心に商品を置いて考えているので、その方の作品がまず、私たちの商品に合っているのかという視点を重視しています。
とは言っても、当社の商品を担当していただいたことのないコピーライターの方が大半ですので、過去の実績を見る際には「きちんと商品に落ちるコピーを書かれているかどうか」「商品の価値を伝えられているかどうか」の二点を重視しています。
コピーにもいろいろなタイプのものがあります。面白くて楽しい表現や、奇をてらった表現で引きつける企業もあれば、商品ベースでコピーを考える企業もあります。当社が求めるコピーはどちらかというと後者のほうなので、商品にきちんと合ったコピーなのかを重点的に見るようにしています。商品を基軸に置いたコピーと言っても、そこで表現されるのは機能だけではありません。私たちが、その商品に込めた想いや願いが伝わるようなコピーであることが重要なのです。
また、企業の持つ特徴や課題を押さえることも大切です。例えば当社はロングセラーの商品を多く抱えています。そのため、クリエイティブの力で、商品を常に新しく見せ、鮮度を保ち続ける努力が必要です。少しでも古い商品だと思われてしまえば、消費者の方、特に若年層の方には、自分の求める商品だと認識していただけない恐れがあるためです。
そのため、コピーを選ぶ際には当社の商品を新しく見せるような表現になっているかも重視します。先ほどお話した、商品に込めた想いや願いが伝わるようなコピーを書いているか、というポイントにもつながりますね。
常に新しい表現でブランドの鮮度を保つ
次に、クリエイティブが世に出るまでの当社の場合の流れを説明します。当社には、各商品にプロダクトマーケティングマネージャー(PMM)がいます。このPMMが1年間の企画制作を考えるのですが、提案された企画に基づいて私たちとPMMが、例えば何をゴールに設定するのか、何を目的にコミュニケーションを行うのかといったことをミーティングして固めていきます。
決まった項目からオリエンシートに落としていくのですが、ここで第三者の視点を取り入れるようにしています。当社にはロングセラー商品が多いため、社内には発売当時から何十年とずっと携わっている顧問がいます。昔から商品のことをよく知っている人に私たちの世に出そうとしているものは本当にこれで正しいのかどうか、意見をもらうようにしています。
しかし、表現は常に新しいものを追い続けなければいけないので、当然全ての意見を取り入れられるわけではありません。いただいた意見をエッセンスとして加えつつ、新しいことを打ち出していくようにしています。
最終的には私たちの上の立場にいる役職者が確認し、決済をもらったあと、そのオリエンシートを元にして、クリエイターと一緒につくり上げていきます。任せるのではなくて、オリエンシートから生まれてくる言葉を一緒に考えていくことが大事だと思います。
最終的な表現はコピーライターに任せる
もちろん、最終的な表現自体はコピーライターの方から出していただきます。私たちがあまりにコントロールしてしまうと、せっかく優れた感性を持った方に依頼しているのに、表現が私たち依頼主の中にある言葉に落ち着いてしまうからです。
私たちが商品に込めた想いや願いは、議論を通じてしっかりとお伝えしながら、最終的にはそれを踏まえたうえで外から見た言葉や表現を大事にしたいなと思っています。当社とトーンが合っているかは後で擦り合わせる機会がありますが、なるべく私としてはコピーライターの方の感性をそのまま生かしたいと考えているので、極力手を加えないようにはしています。
これまでの経験から、クリエイターの方の感性や感覚を活かしたほうが、新しいものが生まれると思います。ある部分は思い切ってお任せして、クリエイターの方にも、私たちと同じ船に乗った気持ちになって、仕事に取り組んでいただくほうが、私たちにとっても良い結果が生まれる確率が高まるのではないでしょうか。
文化と歴史を肌で感じ 企業自体を知ってもらう
コピーライターの方に商品のコンセプトや想いを伝えるためには、当社自体の歴史を全て知ってもらうことが必要だと思います。当社は元々、徳島で生まれた会社なのですが、企業の文化とは、社史を読んで学ぶのではなく、実際に体感しないとわからないもの。そこで、携わっていただくクリエイターの方には、なるべく発祥の地である徳島に行ってもらって、当社の工場や、当社が関係する美術館や施設を見て空気を感じてもらうようにしています。
机上でも文化や歴史を学ぶことはできるかと思いますが、徳島の地には私たちの歴史が息づいています ...