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宣伝担当者が知っておきたいクリエイティブの基本

LTVやロイヤルティを高める 顧客の『感情』まで把握したシナリオ設計

大広 アクティベーションデザイン統括ユニット 澤田善郎氏

テレビCMからソーシャルメディアの投稿まで、消費者との接点が格段に増えたことで、おのずと広告・コンテンツ制作が必要とされる場面も、そのバラエティが広がっています。担当者自らに制作スキルが求められるもの、外部のパートナーのディレクション力が求められるものがありますが、本特集では双方を織り交ぜながら、1年にわたって、特にアウトプットの完成度を高める実践的ノウハウ・考え方を解説していきます。

ダイレクトマーケティングの基本

顧客一人ひとりに合った情報やコンテンツを直接届けるダイレクトマーケティングは、目の前の顧客はもちろんのこと、自社ブランドのことも真に理解する必要があります。企業から伝えたい情報を適切な相手に届け、自社やブランドのファンになってもらうにはどうしたらよいのでしょうか。受け手の五感に訴え、成果をあげるダイレクトマーケティングの戦略からクリエイティブ制作のポイントをまとめました。

    ダイレクトマーケティングのここがポイント!

  • 顧客のレベルに合わせたシナリオ設計を行うため、分析を怠らない。
  • 顧客の数だけシナリオがあることを意識すべし。
  • ブランドの目的や顧客に合わせた施策を行うことで顧客を育てていく。

顧客レベルの分析を行い 最適なコミュニケーションを探る

顧客とのコミュニケーション戦略においてLTV(顧客生涯価値)を高めることが重視されるようになってきています。まずLTVとは何かについて触れておくと、顧客と企業が取り引きを終えるまでの期間の中で、その顧客が企業やブランドにもたらす利益の累計を算出したマーケティングの成果指標を表します。

しかしLTVにまで視野を広げると、新規顧客の単純な獲得効率の設定がしづらくなったり、「生涯価値といっても、どこまで見たらよいの?」という壁に直面したり、課題の声も聞きます。

LTV向上を目指す施策は、難しさが伴うのも事実ですが、成熟した国内市場でビジネスをする上では、この指標を重視せざるを得ないとも言えます。

何から手を付けてよいか、わからないという方はまず、顧客のポテンシャルに目を向けてみることから始めてみるとよいと思います。そこで大切なのが、自社にとっての「お客さま」の定義です。多くの場合、お客さまとは自社の商品を購入してくれた人であり、良いお客さまとは多く買ってくれる人のことを指すのではないでしょうか。このように、自社の商品を買ってくれる人を自社やブランドのファンだと思いがちです。

しかし顧客分析をしてみると「たまにしか買わないけれど、ロイヤリティが高くて、ブランドの熱狂的なファン」の人もいますし、「頻繁に買ってくれているけれど実はそんなにファンではない」という人がいることがわかったりします。

そこで当社が開発した認知からロイヤル化までの顧客の動きの可視化を目的としたデータプラットフォームでは、ユーザーの購買行動(アクションロイヤルティ)と感情(マインドロイヤルティ)の2軸でユーザーの状態を可視化するようにしています。実際の行動と感情の両面から、真のロイヤリティに迫ろうとしているのです。そして、ここで分析した結果をもとに顧客の状態に合わせたコミュニケーションシナリオを設計しています(図表)

図表 購買行動(アクションロイヤルティ)と感情(マインドロイヤルティ)の2軸で可視化するユーザーの状態

この2つの評価軸を組み合わせると、真のロイヤルティが見えてきます。まず「アクションロイヤルティ」では、「まだ購入していないけれど、ECサイトを訪れた見込み顧客」と「商品を一度購入した顧客」「よく購入してくれる顧客」といったレベル別に顧客を分類していきます。

一方の「マインドロイヤルティ」分析では、「自社ブランドを自分ごと化して好んでくれている人」「さらに共鳴をして、SNSなどでブランドに関する情報発信をしたり、他者へ推奨するレベルに達しているファン」などのレベルで顧客を分類していきます。そして、これら2つの分析を組み合わせながら顧客分析をしていくのです。

すると、「商品を頻繁に購入していない人は企業のファンではなく、頻繁に購入している人は熱狂的なファンだ」という認識が必ずしも正しいわけではないということが見えてきます。

ここの理解を誤ると、「見せかけのロイヤルティ」に騙されて顧客の離反を招きかねません。「見せかけのロイヤルティ」の人たちを自分たちのファンだと思って放置していると、徐々に離脱顧客になっていく。そこで、前述した感情のレベルごとの分析を、同じ「買っている人」の中でもやること。そのうえで、適切なコミュニケーション設計を組み立てる必要があります。

顧客との関係性で重要なのは 関係性維持のためのブランディング

ここまでのLTVやロイヤルティの話を踏まえ、本題であるダイレクトマーケティングにいかに活用できるかという話に移りたいと思います。企業においてダイレクトマーケティングに期待される役割とは、明確に売上の向上に結び付くことです。そこでCRMと表される顧客との関係性構築のための活動も、ダイレクトマーケティングの世界では、売上拡大の役割が期待され、主にプロモーション活動になっているケースが多いです。

つまり前述のように、「買っているか、買っていないか」という世界の中で、すべてが判断されがちです。短期的な売上拡大だけを目指すのであれば、この指標だけ追っていてもある程度成果は出せるかもしれません。しかし成熟市場のマーケターには、いま長期的な視座での成果も求められています。

そこで「顧客とのつながりはどの程度あるのか」「ブランドへの執着心はどの程度あるのか」といった点まで見る必要があるのです。短期的な売上拡大のプロモーションだけでは、そのうち行き詰まってしまうでしょう。

いわゆる「売る」ことだけを目的としたダイレクトメールばかり受け取ると、生活者も疲れてしまいます。一方で生活者自身が興味を抱いたり、好きだと感じているブランドのメールは好んで見られるものです。良い関係性があるからこそ、企業からの"売り"のメッセージも受け入れてもらえるのです。つまり、結果的に成果につなげるためには短期的なプロモーションだけでなく、「顧客を維持する」ためのブランディング活動が必要なのです。

効果的な施策を打ち出すためのシナリオ設計とは

よくダイレクトマーケティングの世界では「プロモーションを目的としたEメールを送ったところ、開封率は何パーセントで、コンバージョン率は何パーセントだった」といった指標が使用されます ...

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