テクノロジー全盛時代、マーケティングの進化に伴い、迫られるマーケターの変革とは。企業マーケティングを支援する立場のテクノロジーベンチャーのトップたちが、新時代のマーケター像を語り合った。
フロムスクラッチ 代表取締役社長 CEO 安部泰洋氏
1983年福岡生まれ。人材系ベンチャー企業にて、営業・新規事業・ターンアラウンドの責任者を歴任。その後、リンクアンドモチベーションへ入社し、全社MVPを受賞。フロムスクラッチを2010年に設立。BtoC・BtoB、業種・業態にかかわらず、数々の営業組織・マーケティング組織を変革している。
“マーケティング=広告”からの脱却
—自己紹介を兼ねて、簡単に事業の説明をお願いします。
新垣:数理モデルシミュレーション技術で企業のマーケティングを支援するファインドパースという会社を2013年に設立し、代表を務めています。鳥取大学教授の石井晃教授が考案した「ヒットの数理モデル」をマーケティングに応用し、企業の商品・サービスに関するネット上の話題数から、口コミをはじめとする効果の可視化、メディアにおける広告効果の測定など、マーケティングの予算配分の最適化などをサポートしています。
安部:前職のコンサルティングファーム時代に企業のマーケティングに携わる機会が多く、米国はマーケティングを経営の根幹にしている一方、日本の場合は“マーケティング=広告”と狭義に捉えられており、圧倒的な差があると感じていました。先端技術の基礎研究開発では米国にも負けていないにも関わらず、技術をビジネスに応用するカルチャーが日本にはあまりない。技術を駆使してマーケティング大国になるべきだという思いから、2010年にフロムスクラッチを立ち上げました。現在はワンプラットフォームでマーケティング効果の最適化・最大化を実現するサービスの開発・提供をしています。
ジュリアン:私はもともと日立製作所で核融合や加速器の開発などをしていました。その後ヤフーでCGM( コンシューマー・ジェネレイテッド・メディア)事業の立ち上げを通じて、情報が人に与える影響そのものを指標化したいという考えに至り、エコノミックインデックスを設立しました。株価や売上、支持率、視聴率などといった人々が情報に接した結果の数値と、情報の因果関係をリアルタイムで可視化するサービスを提供しています。それにより、これまで見えなかったユーザーの行動や社会のトレンドなども予測することができます。
ファインドパース 代表取締役CEO 新垣久史氏
2000年富士通グループ入社後、ベンチャーへ転職。2005年デジタルハリウッドにて文科省研究事業に参画し、群衆シミュレーション研究に従事。2013年鳥取大学発ベンチャーとして起業。共著に『大ヒットの方程式』(ディスカヴァー21)。
エコノミックインデックス 代表取締役社長兼CEO エルマー・ジュリアン・ブローディ氏
香港生まれ、英国・中国・日本育ち。英国籍。日立製作所 核融合加速器開発センター、ヤフー株式会社 経営戦略・ヤフージャパン研究所などを経て、2012年9月に独立・起業。
企業の“企み”がバレてきている
—現在、企業が抱えるマーケティング課題のなかで最も大きなものは何だと捉えていますか。
安部:マーケティングというものの範囲をどう捉えるか …