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マーケティング・テクノロジーの未来

マーケティングオートメーションは何を自動化するのか

アンダーワークス 田島 学

昨今、話題に上がることの多いマーケティングオートメーション。多くのツールが日本国内に参入し、日本企業による導入事例も増えつつある。自動化によってもたらされる機能やメリットにはどのようなものがあるのか。

テクノロジーを再定義する

マーケティング施策を立体化させる上では、「データ」「チャネル」「テクノロジー」の3つの軸が必要です。データ、チャネルがオンライン・オフラインとシームレスにつながることで、顧客一人ひとりに最適なオムニチャネルエクスペリエンスが提供できます。その実現をサポートするのが、テクノロジーです。

データを統合・分析・解析し、顧客を理解して複雑な接点を想定したカスタマージャーニーを描き出す。その上で、さまざまなデータから、顧客を特定する要件を定義していく。マーケティング戦略は、このように顧客とチャネルを再定義したファネルをマップとして描き、コンテンツや機能、コミュニケーションをプロットしていく形で進めていくべきでしょう。

しかし、CMSやアクセスログ解析、メール配信システムなど、現時点ではマーケティング部門だけで複数のソリューションが、別々に導入されている状況です。さらに、顧客データベースは、CRMを見ている情報システム部門が担当しているケースが多く、テクノロジーがデータとチャネルの統合を阻む要因となってしまっています。

マーケティングにイノベーションを起こすには、社内におけるテクノロジーの再定義が必要であり、それに基づき、改めてテクノロジーとの向き合い方、活用のあり方を考えていくべきでしょう。その戦略なくして、テクノロジーを使いこなすことはできません。

注視していただきたいのは、“テクノロジー中心主義”は、実は“顧客中心主義”の始まりと言っても過言ではない時代になってきたということです。顧客を深く知る、顧客のわがままに応えるエクスペリエンスを提供する、その両面において、いまやテクノロジーの導入なくして、実現は不可能です。そして真に顧客と向き合おうとする企業は、テクノロジーを中心にマーケティングを考えざるを得ません(そして当然のことながら、新しいテクノロジーの導入だけを漫然と行なうだけでは、よくある失敗に陥りがちであるということも重要です)。

テクノロジーの活用によってマーケティングをデジタルシフトさせ、一人ひとりの顧客に対して適切なエクスペリエンスを提供する。マーケティングオートメーションなどの新たなテクノロジーを戦略的に活用することが、変革につながっていくのです。変革にはさまざまなステップがありますが、ここではマーケティングオートメーションに焦点をあて、詳述していきます。

MAを導入する3つのメリット

マーケティングオートメーション(以下、MA)とは、マーケティング活動による売上向上を目的にした考え方です。大量のリードを属性情報や接触履歴を基に、詳細なセグメントに分けながら、個々のニーズにあったコミュニケーションを行います。リードを育成・評価し、確度の高い商談を創出するというプロセスにテクノロジーを入れ、自動化していく取り組み全体を指します。

現状では、特にBtoBマーケティングの領域において先行しています。営業担当者が潜在顧客と1対1で行う人的営業と比較し、マスマーケティング活動の施策は、潜在顧客を一様に扱いがちであると言われてきました。しかしMAを取り入れることで、そのギャップを埋め、質の高い商談をより多く創出することができると期待されています。

MAは、その実践を支援するテクノロジーの導入とセットで行われるものであり、その成果は売上拡大に貢献するだけにとどまりません。売上の拡大という最終ゴールに至る途中のプロセスで、マーケティングの現場で起きやすい、あらゆる課題も解決してくれるものです。ややBtoBマーケティングにおける話が中心になりますが、以下に挙げる具体的な3つの導入メリットは、BtoCのマーケティングにも応用できるでしょう。

(1)分散するデータの統合

多岐にわたるマーケティング施策も、その結果がデータとして得られる時代になっています。たとえば、主催(共催)イベントへの申し込み・来場者リスト、Webサイトへの訪問ログ、Eメールの配信/クリック履歴などです。しかし、それらのデータは特定の場所に蓄積されるのではなく、マーケティングツール、エクセル、紙媒体などに分散しているのが現状です。そこで、せっかくデータを取得しても、掛け合わせて分析したり、活用するレベルにまで到達できていないケースが多く見られます。

MAツールは、こうしたさまざまなデータを集約し、統合管理することを可能にします。それにより、「誰が自社Webサイトを閲覧しているのか」「どのセミナーに参加した人がどのEメールに反応しているのか」「どのイベントから商談に発展する確率が高いのか」など、これまで見えてこなかったインサイトからセグメント別にマーケティング施策を実行できるようになります。特に、Webサイト訪問者のブラウザ情報(クッキー)とリードデータ(潜在顧客データ)を紐づけられることは、マーケティング活動の成果に非常に大きなインパクトを与えます。自社のリード(潜在顧客データ)の中で、誰がいつ自社Webページを見ているのかを把握できるので、より確度の高いリード(いま誰が自社に関心を寄せているのか)を抽出でき、営業活動の優先度付けが可能になるのです。

将来的には …

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