図表1 グローバルでのフィンテック投資
世界のフィンテック投資の伸びと、欧米の比率。全体の9割近くを米国(青)と欧州=ロンドン(オレンジ)で占める状態。2014年の伸びと同じ勢いで、2015年も伸びている。出典:Accenture
注目高まるフィンテック
2015年はニューヨークへやって来る日本からの出張者が、なぜか金融業界ばかりが目立つという状況が続きました。どうやら日本からの「フィンテック」視察出張だった様子です。
とはいえ、日本のフィンテックは政府が腰を上げたばかりのステージ。大前提として、すでに投資件数と投資額において、日本と世界とは“天と地”程に引き離されていると理解しておく必要があるでしょう(図表1)。フィンテックへの技術投資は米国と欧州(主にロンドン)ですでに9割以上がカバーされています。規制緩和のペースで考えても、日本は2015年からの動きなので、欧米からは数年遅れと言えます。
データの取得パターンも変化
アップルが発表した「アップルペイ」への注目度を見ても、日本のフィンテックへの関心度合いはまだまだ低いことに気付きます。
実は2015年10月より施行されているICカードの国際基準規格(EMV※1)に向けて、日本でも小売の端末変更の対応準備が進んでいます。ところが、日本ではクレジットカードを必要とする「接触型」が主流で、アップル他が採用する規格はカード不要でスマホをかざすだけの「非接触型(NFC型※2)」です。日本のおサイフケータイやSuica(FeliCa)の規格はEMV規格の中でも孤立した規格になっています。
アップルは満を持して、2015年10月から始まったEMV世界規格の変化に合わせて「かざすだけ(NFC)」を武器に参入しました。巨大企業アップルの姿勢はフィンテック分野への注目のシグナルです。この動きに伴い、世界ではマーケティングデータの取得パターンにも確実に変化が起きています。
欧米では「金融持株法」の規制が広義に緩められており、銀行によるUXデザイン会社などの買収(例:米キャピタルワン銀行による大手Webデザイン会社Adaptive Path買収など)や、フィンテック企業への投資(例:テクノロジー・スタートアップと投資家が集まるイベント「フィノベート」への参加など)が加速しています。UXデザインというマーケティング業界のオハコすらが、銀行にとって“儲かる”領域として投資されているのです。フィンテックの技術、主なエリアは以下です。
※1 EMV:EuroPay、Master、Visaの頭文字。金融分野におけるICカードを用いたカード取引のための「ICカードと端末に関する仕様」を定めた国際的なデファクト標準を言う。
※2 NFC:Near Field Communication 数十センチの距離での無線通信の国際規格。
フィンテックの技術、主なエリア | |
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(1) 決済、送金 | ペイパルのような個人間送金、モバイル決済など |
(2)融資、資金の貸出 | ソーシャル・レンディング、クラウドファンディングなど |
(3)資産運用、管理 | ロボット(AI)による資産の自動運用、家計管理アドバイスなど |
(4)セキュリティー | 不正の検知、生体認証技術、ユーザーインターフェイス(UX)など |
(1)~(4)すべての根底でトランザクションを支える技術として、仮想通貨=「ブロック・チェーン技術」が注目されています。その定義と言葉の用法にはさまざまな技術知識が必要になりますが …