スープストックトーキョーは離乳食の無料提供を行っている。ネット上の賛否の声に対し発表した声明が称賛され売上増にもつなげた。一連の対応は、松尾真継社長が広報部と連携しながら陣頭指揮を執り、ブランド戦略に顧問として携わる工藤萌氏がサポート。声明発表までのいきさつを聞いた。
※本稿は宣伝会議「AdverTimes」でのインタビュー記事を再構成したものです

写真右から、スープストックトーキョー代表取締役社長の松尾真継氏と同社顧問の工藤萌氏。
声明発表までの経緯
スープストックトーキョーは4月、一部店舗で提供していた離乳食後期の無償サービスを「Soup Stock Tokyo」全店で展開することをTwitterで発表。SNS上では賛同の声だけでなく「子ども連れが増えるなら行かない」などの批判的な意見があり「炎上」状態となった。
同社はサービスの開始を待って公式サイト上で声明を発表。「ある特定のお客様だけを優遇するような考えはありません」「私たちのスープやサービスに価値を見出していただけるすべての方々の体温をあげていきたいと心から願っています」などと企業の思いを誠実に伝える内容で、共感を集めることに成功した。
黙ったままではいられない
─企業としての声明を出すに至った経緯を教えてください。
松尾:まずは「黙ったままではいられない」という気持ちが僕のなかにありました。だけど意見の出し方については慎重であるべきということも理解していました。工藤さんに相談しながら声明を出すタイミングを検討していました。声明を発表するとしたら、タイミングは2回。ひとつが炎上中、もうひとつは離乳食後期の無償サービスを開始した4月25日以降でした。
炎上中に何を言っても素直な気持ちで読んでもらえないし、切り取られて取り上げられる懸念もありました。すでに、メディアからの取材依頼が殺到していたのですが、どの依頼状も「ひとり女性の居場所を奪ったことについてどう思うか」といった趣旨のことが書かれていて。この状況では、どれだけ真摯に話をしたところで、想定されている文脈に沿う形の記事になってしまうと考え、炎上している最中には一切、発信をしないことに決めました。
サービスを開始する発表を4月18日にTwitterで投稿したのですが、その日の夜から炎上状態になっていました。サービスそのものが開始されてもいないのに、何かを言うべきではないと思ったことも、炎上中に発信をしないと決めた理由のひとつでした。
例えば、サービスの開始初日に店舗にベビーカーの行列で混乱がおきたり、無料を目当てにしたお客さまが殺到して、他のお客さまにご迷惑をおかけしてしまうような状況があれば、また対応も変わったかもしれません。しかし、実際には店舗でそんな風景は一切見られませんでした。
正しく知ってもらう機会に
─声明文は松尾社長が書かれた?
松尾:サービス開始後には、声明を発表すると決めていたので、自分で書き始めることに。確か、23日か24日くらいにA4で6枚くらいの文章を書いて...