広子のIR歴も二年目に入り、新しく後輩の東堂証子がIR担当に配属になった。この一年は、無我夢中で発生する課題にひたすら対応してきたが、教育係への指名をきっかけに改めて基礎知識を整理したいと思う広子であった。
上場広子▶ こんにちは。今日も二人で来ました。
東堂証子▶ よろしくお願いします。
大森慎一先生▶ こんにちは。東堂さん、仕事には慣れた?
東堂▶ 先輩がいろいろ教えてくれるおかげでなんとかやってます。
大森▶ 頼りになるねぇ、先輩。
広子▶ 若い子が入ってきた途端、デレッとしないでくださ~い。
大森▶ オッケー、オッケー。じゃあ株価の話から続けて、IRの仕事を掘り下げてみよう。東堂さん、株価はどうやって決まるか知ってる?
東堂▶ えっ!投資家の需要と供給のバランスが取れた時点で取引成立となり株価が決まる、といった形でしょうか...。
大森▶ いいねぇ、その通り。需給バランスだね。では、その需給バランスはどうやって決まるのかな?
東堂▶ うっ。具体的な価格決定方法についてはうまく説明できません...。
キーワードは2つの「相対」
大森▶ まず、株式を投資対象の商品としましょう。債券や為替相場、その他投資商品がある中で、リスクの度合いと期待収益率が比較されて、株式に投資しようと判断するわけだ。
東堂▶ リスクと期待収益率ですか?
大森▶ そう。ちゃんとした講義は広子さんから受けるとして、会社には従業員持ち株会ってあったっけ?
東堂▶ あります。先輩に教えてもらい、先日入会しました。
大森▶ なるほど。安全な資産とリスクのある資産があるとしたら、東堂さんはどっちを選ぶ?
東堂▶ 安全な資産ですね。
大森▶ でも持ち株会って、株式だから値下がりリスクもあるよね?
東堂▶ そうですね。でも自分たちが頑張れば株価も上がるし、会社から補助金も出て利回りも銀行預金などと比べても断然いいよ、って。
大森▶ うん。そうやってリスクとリターンを比較して考えているんだよ。人によって許されるリスクが異なったり ...