
新聞や雑誌などのメディアに頻出の企業・商品のリリースについて、配信元企業に取材し、その広報戦略やリリースづくりの実践ノウハウを紹介する「リリース道場」。今回は年間369本を配信してきた、近畿大学のリリースの秘訣を解明します。
リリースを寝かせておく
「近大マグロ」「つんく♂プロデュース入学式」など、何かと世の中に話題を提供している近畿大学(近大)。他大学の広報関係者に話を聞いても、近大のPRは別格だといいます。2015年7月に、その近大がまた大きくクローズアップされたのが「うなぎ味のナマズ」という案件。広報部長の世耕石弘さんに話を聞きました。
近年、ウナギの漁獲高が減少して消費者を悩ませています。同大農学部水産学科准教授の有路昌彦さんが代替品の研究を始めたのは6年ほど前のこと。様々な魚を試して苦労の末たどり着いたのが「マナマズ」でした。淡白でやや泥臭いマナマズを、餌と水質をコントロールすることでウナギに近い食味に変えることに成功したのです。
実は2015年2月には、ほとんど発表できる段階まで研究が進んでいたのを、しばらく寝かせておいたと言います。広報サイドが、このネタが一番ニュースになる時期は「土用の丑の日」だと提案し、有路さんも同意したそうです。広報に信頼感がある証拠でしょう。
7月6日にリリースを配信し、13日と16日に大阪と東京で近大が経営する料理店「近畿大学水産研究所」で記者向けの試食会を開催。24日には両店で各30食の限定販売を実施し、そこにもマスコミを呼び込みました。その結果、NHK『ニュースウオッチ9』、テレビ東京『ワールドビジネスサテライト』、日本テレビ『ズームイン!!サタデー』、TBS『情報7days ニュースキャスター』、フジテレビ『めざましどようび』と名だたる番組で紹介。反響が大きかった成功要因は「話題の店との合わせ技だったから」と世耕さんは分析しています。「近畿大学水産研究所」は大学が経営する店として2013年に大きな話題となったもので「一発当てた案件は、その後もしばらく続くんです」。
11月には生産パートナーであった養鰻会社と有路さんで日本なまず生産株式会社を設立して提携企業を募り、11月末時点で既に生産希望が20社、販売希望が50社ほど名乗りを上げています。船出は順調で …