一生かけて追求する価値のある「PR」の仕事の未来像を描こう
新聞記者、PR会社を経て活動する岡本純子氏によるグローバルトレンドのレポート。PRの現場で起きているパラダイムシフトを解説していきます。
読売新聞記者、PR会社を経て活動する岡本純子氏による米国からのレポート。現地取材により、PRの現場で起きているパラダイムシフトを解説していきます。今回は、米国の最新メディア事情とPRパーソンの情報源を取り上げます。
ソーシャルメディアによる地殻変動がアメリカのPRのあり方を大きく変えていることはこれまで度々触れてきたが、今回は、そうした波を受けて、米国のメディア事情やニュースの流れがどのように変化してきているのかに迫ってみたい。また、米国のPRプロフェッショナルがどのような情報源やニュースソースを活用して、知見を蓄え、事例やベストプラクティスを収集しているのかについてもご紹介しよう。
ソーシャルメディアの登場により、ニュースや情報の流れが大きく変わっているのは日本もアメリカも同様である。大きな変化としては、
(1)オンライン専業ニュースサイトやシンジケーテッド(キュレーション)サイトなど新たなデジタルメディアの登場
(2)新聞などトラディショナルメディアの衰退
(3)個人や企業などがネットという新たなチャネルを利用して、情報を受発信する新たな「メディア」(パブリッシャー)に
(4)ソーシャルメディアの普及により、情報伝播のスピードが上がり、経路も多様化していること
(5)情報接触のツールとしてモバイルの重要度が飛躍的に増していること、などが挙げられる。
特に米国において、最も顕著な動きといえるのは、メディア(パブリッシャー)とプラットフォーム(情報チャネル)の分離だ。これまではテレビや新聞というマスメディアが自社のチャネルを使って、直接ニュースを消費者に届ける、というシンプルな流れだった。しかし、最近は、多くの消費者がソーシャルメディアなどのプラットフォームを経由してニュースと接触する流れに変わってきている。
米大手PR会社、エデルマンのチーフコンテントストラテジスト、スティーブ・ルーベル氏によれば、アメリカの情報流通は大雑把に言うと図1のような構造になっているという。メディアとしては
(1)New York Times、Wall Street Journal、 CNNなどのトラディショナルな新聞・テレビなどのメディア
(2)BuzzFeed、Huffington Postなどのオンライン専業メディア
(3)企業のオウンドメディア(ブランドジャーナリズム)の3つ。
消費者がこうしたメディアのサイトに直接アクセスするケースも多いが、アメリカでは、今や70%がプラットフォームを経由して、メディアにアクセスするというデータもある。プラットフォームの代表的なものは
(1)Googleなどのサーチエンジン
(2)Yahoo! Newsや日本発のSmart News、AOL、Flipboardなどのシンジケーテッド(キュレーション)メディア
(3)おなじみのFacebook、Twitter、Instagram、Snapchatといったソーシャルメディアの3つだ。
筆者の肌感覚だが、日本では比較的(2)のキュレーションメディアの存在感が高いようだが、アメリカでは(3)のソーシャルメディアの影響力がさらに大きいように思う。
Facebookは先ごろ、欧米の大手メディア9社と提携し、新しいニュース配信サービス「インスタント・アーティクルズ」を立ち上げたが、これにより、フィード上でのニュース購読がよりスムーズになり、ますますFacebook経由の閲覧が増えるのではないかと予想されている。提携したのは米NBCニュース、米ニューヨーク・タイムズ紙、英BBCニュース、英ガーディアン紙、独ビルト紙、独シュピーゲル誌、米オンラインメディアのBuzzFeed、米アトランティック誌、米ナショナルジオグラフィック誌。これまではこうしたニュースをFacebook上で読むには、クリックして、メディアのサイトに行く形になっており、表示まで8秒ほどかかっていた。メディアがFacebookに直接記事を配信することで表示時間が10倍速くなるという。なお日本での展開は未定だ。
また先日、Appleも新OS「iOS 9」向けに新たなニュースキュレーションアプリを発表している。様々なニュースを集めて、整理し、ユーザーのし好に合わせておすすめ記事をそろえている。特に目新しさはないが …