上場企業479社の広報活動実態調査でわかった日本企業の広報力とその課題、ビジョンについて「8つの広報力」を切り口にレポートする。
情報発信力に関する企業の広報活動実態(戦略構築力の10設問から主要設問を抜粋)
回答した上場企業479社が情報発信力関連で当てはまると回答した数をパーセンテージ表示している。星印は、専門家パネルが重要視した上位3項目(数字は順位)
専門家はトップの発信を重視
「8つの広報力」すべての設問項目のうち、最もスコアが高いのは「自社HPサイトへニュースリリースを掲載している」だった。約9割の企業がリリースを自社サイトにアップしている。ただ定期的に発信しているかというと、「ニュースリリースを定期的に発信している」が64.9%なので、スコアは下がる。ニュースリリースは企業広報における最もベーシックな活動であるが、「定期的に発信する」と回答した企業が約3分の2に留まったのは、上場企業を対象とした調査結果としては気になるところである。決算短信などは当然だが、商品やサービスに関わる企業の動きは株主以外にも知らせてほしいところだ。
今回の調査では「情報発信力」を「マスメディアや自社メディア、ソーシャルメディアなど様々な情報発信手法を複合的にタイムリーに駆使する能力」と規定した。専門家パネルが重視した情報発信は、
①「トップは定期的にメディアの取材を受けている」、
②「重要ステークホルダーに合わせた情報発信活動を行っている」、
③「自社HPサイトは月2回以上更新している」と「ソーシャルメディアを活用した情報発信を行っている」。
このうち企業により差が出るのは「トップ広報」と「ソーシャルメディアの活用」だろう。
2012年、2013年に『日経ビジネス』が「社長の発信力ランキング」を特集した。各年のサブタイトルが「『言葉の力』が企業を強くする」(12年)、「語る覚悟、語らぬリスク」(13年)で、トップの情報発信が企業にとっていかに重要であるかを意識させる内容になっている。上位にランクインした経営者はいずれもメディアの露出が多く、情報発信能力、コミュニケーション能力も高いと見られる。しかし、それだけではないはずだ。
「トップの露出機会をつくる」「メディア取材を設営する」「取材目的が適切か判断する」「取材後にフォローする」などは ...