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カンヌライオンズ2014レポート

クリエイティブの祭典・カンヌから学ぶ、企業の広報部が取り入れたい5つの視点

井口理(電通パブリックリレーションズ)

PRとクリエイティブ。その両立が、広報活動を飛躍させるエンジンになる可能性がある。ここでは、近年の「カンヌライオンズ」の入賞作品をもとに5つの視点を紹介。2012年にPR部門の審査員を務め、今年も現地を視察した井口理氏が解説します。

    視点[1]



    Chipotle「THE SCARECROW」(2014)
    米国のメキシカンファストフードチェーンのチポートレが、行き過ぎた加工食品の工業製品化へ警鐘を鳴らし、自社使用食材の全面自然回帰を宣言。街の食品工場で働くカカシを主人公にしたショ-トムービーと、それをモチーフにしたiTunes Storeでのゲーム配信などを組み合わせた統合キャンペーン。「子どもの食育」という目線から、ゲームなどの手段を盛り込むことで接触機会を創出、対象を広げて成果を出している。

世界的に高まるPRへの期待感

カンヌライオンズは、1954年に創設された歴史あるクリエイティブの祭典である。2011年にタイトルから広告(Advertising)の名称を外し、「カンヌ国際広告祭」から「カンヌ国際クリエイティビティ・フェスティバル(通称:カンヌライオンズ)」へと変わった。

こうしてカンヌライオンズは、クリエイティビティ全般のアワードへと変貌したが、とはいえ日本の企業広報を担ってきた部署にとっては、未だなじみの薄い存在と言えるかもしれない。しかし最近では対象となる部門も増え、いわゆるCM的なクリエイティブのみならずプロモーションやモバイル、そしてPRに至るまで、様々な領域で、さらに領域を越えて参考となるアイデアが盛りだくさんなイベントになったと強く感じる。

そこで今回は、このアワードにエントリーされているここ数年の各国の作品から、PRカテゴリーに限定することなく、日常の広報活動においてすぐにマネしたい、マネできそうなPRエッセンスを抽出してお届けしたい。

なお、前提としてPRへの期待感が世界的にも強まっており、広告業界での相対的ポジションにおいても、その他ソリューションと比較して非常に高まっていることは共有しておきたい。2009年に創設されたPRカテゴリーは年々そのエントリー数を増やし、現在では1800件を突破。その伸長率は今年で言えば前年比43%増を記録し、そのほかの部門を圧倒している。

もちろん歴史あるその他部門と比べれば、エントリーの絶対数はまだまだ追いついていないが、実はあらゆるカテゴリーにおいて、PRが重要な役割として関わっているキャンペーンがいくつも見受けられる。以上を踏まえ、私が感じた、今後のPRを設計する際に外せない、5つの兆候について述べていきたいと思う。

視点[1] 企業メッセージにフォーカスした情報発信

商品・サービスがUSP*1で差別化できなくなった現代。それら商品・サービスを提供する背景となる企業姿勢・ビジョンを明示し、さらにそれを生活者の日常生活の中でより実感してもらう取り組みが各企業によって強く推進されている。

*1 USP……Unique Selling Proposition=自社の製品などが持つ強み、購買の動機につながるベネフィットのこと。

企業がその製品やサービスの提供によって生活者ベネフィットを向上させることや、それらの活動を通じて企業が社会的存在意義をまっとうしようとする姿勢を、生活者や社会と「約束」するような強い表明によって、生活者の賛同・共感を獲得することが求められている。

今年のPR部門グランプリを獲得した ...

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TBWA\HAKUHODO 原田朋さんカンヌレポート「PRの未来を探る審査会、複眼思考が欠かせない時代に」

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