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時事ニュースから読み解く、危機対応の本質

広報効果を狙い過ぎた、STAP細胞問題に学ぶ

城島明彦(作家・ジャーナリスト)

危機を乗り越えるための対応方法は、世間を賑わせる時事ニュースの中から学べる点が多くある。取材される側と取材する側の両方を経験し、広報業界を30年以上見続けてきた作家・ジャーナリストが、危機対応の本質について解説する。

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世界を騒がせた「STAP細胞事件」を一般企業とは無縁な事件と考えてはいけない。どんな企業にも、他社に先駆けて画期的な技術や製品を開発し、それを世間に知らせたい願望があるし、本事件は、今年1月28日の理化学研究所(以下、理研)の広報発表から始まっている。広報が絡むという点で学ぶべきものが多い話だ

理研広報は、「体細胞の分化状態の記憶を消去し初期化する原理を発見」と題するプレスリリースを作成し、「『STAP細胞』と名づけた新しい万能細胞を作製した画期的な論文が明日、英科学誌『ネイチャー』に掲載される。それを成し遂げたのは、発生・再生科学総合研究センターの小保方晴子をユニットリーダーとする共同研究グループ」と発表した。

ダイジェスト版リリースの工夫

理研広報は、通常の「研究成果発表」という形態のプレスリリース以外に1219字にポイントを端的にまとめたダイジェスト版の「60秒でわかるプレスリリース」もあわせて発表した。専門知識がないとなかなか理解しづらい研究について、一般の人が読んでも分かりやすいように平易な言葉であらためて説明するというこのアイデアは悪くない。企業の広報にも生かせる。以下はその一部だ。

《もし「特別な環境下では、動物細胞でも“自発的な初期化”が起きうる」といったら、ほとんどの生命科学の専門家が「それは常識に反する」と異議を唱えることでしょう。しかし、理研発生・再生科学総合研究センターの小保方研究ユニットリーダーを中心とする共同研究グループは、この「ありえない、起きない」という"通説"を覆す"仮説"を立て、それを実証すべく果敢に挑戦しました。》(太字筆者)

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