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時事ニュースから読み解く、危機対応の本質

「言い逃れ」が火種となった阪急阪神ホテルズ食材虚偽表示謝罪会見

城島明彦(作家・ジャーナリスト)

危機を乗り越えるための対応方法は、世間を賑わせる時事ニュースの中から学べる点が多くある。取材される側と取材する側の両方を経験し、広報業界を30年以上見続けてきた作家・ジャーナリストが、危機対応の本質について解説する。

記者会見前に反応を探れ

「消費者目線で考えろ」は、経営者がよく口にする言葉だ。昨年10月から11月にかけて全国各地の有名ホテルやデパートが次々と悪行を自白し、メディアをにぎわせた「食材偽装連鎖事件」の"火付け役"阪急阪神ホテルズの出崎弘社長(当時)も例外ではなかった。彼は阪急グループの中核「阪急電鉄」の出身で、駅の助役経験もあり、「消費者目線」を常に意識し、「顧客満足度」を気にしてきたはずだった。ところが、10月24日の記者会見では消費者目線に立てず、「偽装ではなく誤表示」と執拗に言い繕(つくろ)ってメディアから袋叩きにされ、4日後の二度目の記者会見では「辞意表明」を余儀なくされた。

実は私は、阪急グループの出版社「阪急コミュニケーションズ」から『広報がダメだから社長が謝罪会見をする!』という本を出している。書名にある「広報」には「広報戦略」のニュアンスも含まれるが、当初の書名案は「社長がバカだから広報が苦労する!」だった。出崎前社長が読んだかどうかは知らないが、彼には記者会見前にやるべきことがあった。私を含めたフリーのジャーナリストとか、『ニューズウィーク 日本版』(阪急コミュニケーションズ発行)の取材記者など、複数の口のかたい取材側の人間に「どういえば、メディアに叩かれないか」と気軽に相談すべきだった。

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