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時事ニュースから読み解く、危機対応の本質

午前1時30分に謝罪会見。非難を浴びた広報センス

城島明彦(作家・ジャーナリスト)

危機を乗り越えるための対応方法は、世間を賑わせる時事ニュースの中から学べる点が多くある。取材される側と取材する側の両方を経験し、広報業界を30年以上見続けてきた作家・ジャーナリストが、危機対応の本質について解説する。

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“午前1時30分”に開催された食品農薬混入事件による謝罪会見
食品会社「マルハニチロホールディングス」の子会社「アクリフーズ」の工場で製造された冷凍食品から農薬マラチオンが検出された問題に関する記者会見。2日前にこの問題を公表した当初より重い農薬毒性であることを会見で訂正した。当初用いていた毒性の指標について厚生労働省から指導を受け、別の指標に基づく評価に訂正したとしている。久代社長は会見で、「消費者に大きな誤解を与えたことをお詫び申し上げたい」と謝罪。幹部らは「知識が不足していた」と繰り返した。

「発表の基本」をわきまえるべし

食品大手のマルハニチロホールディングス(以下、マルハニチロHD)の広報が、〝冷凍食品の農薬混入事件〟で見せた初動対応は、「記者発表の基本(イロハ)」を知らないのではないかと疑わせる非常識なものだった。

報道関係者に配布されたプレスリリースの表題は、「株式会社アクリフーズ群馬工場生産品における農薬検出について」。アクリフーズの旧社名は「雪印冷凍食品」で、2002年に「雪印食肉偽装事件」が起きて現社名に変更。翌年ニチロに買収され、2007年にはニチロとマルハの合併によりマルハニチロHDの子会社となって現在に至る。

発表当日は、「食の安全」に関わる重大事ということから、アクリフーズ社長だけでなく、親会社のマルハニチロHDの社長も並び、リリースも両社の連名だった。しかし、両社が最初の「緊急記者会見」を開いたのは、2013年12月29日午後5時。テレビなら夜のニュース枠で流せるが、新聞は翌日の朝刊にしか載せられない中途半端な時刻だ。夕刊の締め切りに間に合わせるには、午後1時以前に記者会見を開く必要がある。自社の都合を最優先する神経が疑われた。

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