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「共感」への対応が顧客を呼ぶ!

花王執行役員に聞く ESG戦略とサステナブルな商品づくり

インタビュー/Dave Muenz(花王 執行役員 ESG部門統括)

2019年4月にESG戦略の「Kirei Lifestyle Plan」を発表し、消費財メーカーの“サステナビリティ”をけん引してきた花王。米国在住のDave Muenz氏が、就任後実践してきたグローバルな施策を語る。

お客さまが主役のESG戦略

──花王は積極的に「社会課題の解決」に取り組んできました。2018年4月にESG部門統括に就任されましたが、どのような役割を担ってきましたか。

花王は創業以来サステナビリティを意識したビジネスを行ってきました。私はそれをより高いレベルで推進していけるよう組織全体をけん引していく役割を担っています。

ステークホルダーの皆さんに対しても「花王はこういうことをやっているんだ」と分かっていただけるようなコミュニケーションをとっていきたいと思っています。

──そのような考えをベースに2019年4月に発表したのが、ESG戦略の「Kirei Lifestyle Plan」ですね。

我々は消費者が求める持続可能な暮らしを「Kirei Lifestyle(キレイライフスタイル)」と定め、それを実現するための戦略として「Kirei Lifestyle Plan」を策定しました(図1)。この戦略には2つのポイントがあります。1点目は「きれい」という日本語を採用していることです。「きれい」は、花王がこれまで大切にしてきた価値や、ステークホルダーに提供してきた価値を象徴している言葉です。

図1
花王「Kirei Lifestyle Plan」

出所/花王

「きれい」とは、すなわち“こころ豊かな暮らし”だと思います。見た目をきれいにする・清潔にするということだけではありません。花王では、内面の充実も含めて、すべての人が享受できるような「きれい」を提供することを目指しているのです。

2点目は、戦略そのものの視点の変革です。この戦略は生活者が主役になっています。花王は、それらのステークホルダーが「Kirei Lifestyle」を享受できるように奉仕していくという姿勢をとっています。

これまでのサステナビリティ戦略は、どちらかというと“企業が何をするか”に重きを置いていました。例えば「二酸化炭素の排出量を減らす」などですね。花王では、それだけではなく最終生活者であるお客さまご自身に、環境や社会に負荷をかけず、かつ自分にとってもプラスになるような選択をしていただくことを目指しています。その選択肢をいかに提供していくかという視点で戦略を構築しているのです。例えばコロナ禍では、暮らしのキレイを守るプロジェクト「プロテクトJAPAN」をスタートしました。

容器のプラ使用量を50%削減

──商品開発には、戦略をどのように取り入れていますか。

重点取り組みテーマとして、19のアクションを定めています。そのひとつが「ごみゼロ」です。容器の原料となるプラスチックなどの使用量を削減するために、詰め替え用製品「ラクラクecoパック」や詰め替えずに、「ラクラクecoパック」をセットして使える「スマートホルダー」などの販売促進に取り組んできました。

最新の取り組みとして、2020年4月に米国で立ち上げた「MyKirei by KAO」があります。「Kirei Lifestyle」を体現するブランドで、シャンプー・コンディショナー・ハンドウォッシュをそれぞれ本体と付け替え用の2種類ずつ販売しています。価格帯は18ドルで、販売チャネルは今のところ米国のAmazonのみです。新型コロナウイルスの影響もありましたが、売上は好調です。

この商品の注目すべき点は容器です。自社開発のフィルム容器「Air in Film Bottle(エアインフィルムボトル)」を採用しています。通常は詰め替え用容器に使用している柔らかいフィルム素材でできていて、容器の外側に空気を入れて膨らませることで自立する仕組みです。この容器は、ポンプ型ボトルに比べプラスチックの使用量を約50%削減することができています。

お客さまにはこれまで通り使用していただくだけで、プラスチック使用量を削減していただくことができます。今後はグローバルでの展開を検討していきたいと考えています。

──開発のきっかけは。

花王の売上ベースでみると...

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