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「共感」への対応が顧客を呼ぶ!

大量消費に疑問を呈し 洋服の循環型モデルを構築

インタビュー/森 雄一郎 (FABRIC TOKYO 代表取締役社長)

ビジネススーツなどのカスタムオーダーサービスを手掛けるFABRIC TOKYO。ミレニアル世代をターゲットにサステナビリティを前提に立ち上げたブランドだ。大量消費に疑問を呈したキャンペーンを2年連続で実施し、大きな反響があった。

“長く着られる服”に需要

──FABRIC TOKYOは、“サステナビリティ”を会社全体のフィロソフィーとして掲げていますね。

我々のターゲットはミレニアル世代です。デジタルネイティブと呼ばれる、子どものころからインターネットがあって、当たり前のようにネットで情報を集めネットでものを買う、という世代ですね。実際、お客さまの平均年齢は約33歳です。私が2020年で34歳なので、お客さまの平均年齢と丁度同じぐらいなんです。

ブランドの立ち上げ時に友人たちにヒアリングをしたところ、自分たちよりも上の世代に比べて、サステナビリティを意識した消費行動や発言が多い印象を受けました。こうした同世代の消費動向を反映して、2014年に立ち上げたのがFABRIC TOKYOです。つまり、設立当初からサステナビリティを前提にしていたのです。

当社の事業は、「オーダーメイド生産方式」です。1人ひとりにフィットしたスーツを提供することで、長く愛用していただけます。また、中価格帯かつ“高品質”を追求しているので、簡単に劣化することもありません。

オーダーメイドの市場規模は、年間10%ほど伸びているというデータもあります。当社でも現在、店舗を国内18カ所に拡大し、2019年には3Dスキャンを活用した新ブランド「STAMP」を立ち上げました。

オーダーメイドが伸びている要因は複数あると思います。洋服を長く着たい、つまりサステナビリティを意識したお客さまが増えているということがひとつ。それに、特に若年層の消費動向として、多様性の社会になってきたことも挙げられます。画一的な洋服よりも、自分だけのオリジナリティを求めるようになってきたということです。

コロナ禍では、より多くのご注文をいただいています。実は、スーツカテゴリは、アパレルのEC化率が10%を超える中1%程度と低水準です。つまり、これまでスーツをECサイトで買う人はほとんどなかったのですが、コロナで一気に風向きが変わりました。

そこで、オーダーメイドであるにもかかわらずECサイトで購入しやすいサービスを追求してきた当社に関心を持つ方が増えたようです。

洋服回収が集客につながる

──2019年9月に発表した新たなビジネスモデル「RaaS(Retail as a Service)」構想では、3つの取り組みを発表されました。そのうちのひとつに「サーキュラーエコノミーモデル(循環型経済)」が入っていましたね。

アパレル業界は毎年世界で9200万トン、日本でも100万トンの繊維を廃棄しています。そこで我々は、洋服を回収し新たな洋服として再生させることで、服から服をつくるサーキュラーエコノミーという循環モデルをつくろうと考えたのです。

お客さまの不要な洋服を店舗で回収し、日本環境設計のサービス「BRING」によって循環型素材に再生します。その素材をつかって新たな洋服が製造できます。我々が行っているのは、新しく洋服をつくるのではなく、すでに市場に流通している洋服を回収し、アレンジを加えて新たな価値に生まれ変わらせることです。持続可能な社会をつくるためには絶対に取り組むべきことなのですが、なかなか広がりを見せません。我々が率先してやっていきます。

ブランド立ち上げ当時は、このような“サステナビリティ”に関する取り組みは、他社のブランドとの差別化要因として捉えていました。しかし、今はものづくりを行う会社として当たり前にやらなくてはいけない責任として捉えています。

店舗での洋服回収は、集客にもつながるという側面もあります...

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