通信販売の領域を超え、ダイレクトマーケティングの取り組みはあらゆる業種業態で活性化してきている。そうした背景のもと、顧客開拓、顧客育成の現場において先進的な施策にチャレンジし、成果を上げているマーケティングリーダーが登壇する特別セミナーが10月5日、行われ、顧客ロイヤリティ形成の可能性が、それぞれの立場から語られた。
二項対立を統合し、CRMにL(ロイヤリティ)を
第1部「生活者とのダイレクトな関係がもたらす顧客価値」、第2部「スマホ世代に写真直営店を通じて富士フイルムが取り組む顧客接点の強化」に続き、第3部では「二項対立の融合によるCLM(カスタマー・ロイヤリティ・マネジメント)」を大広 ダイレクトマーケティング総合研究所 所長の松浦信裕氏が講演した。
松浦氏は、「オンライン」と「オフライン」、「プロモーション」と「リレーション」など、ダイレクトマーケティングにおける二項対立は多いと指摘する。例えば「オンライン」、「オフライン」に対応するチームがそれぞれ組織的に分かれており、それぞれの動きを把握していないといったケースがある。それに伴い、至るところで齟齬や非効率的な動きが生まれる。
それらを統合していくキーワードとして松浦氏が挙げたのは、「プロダクト×サービス」。プロダクトサイドがモノを作り、それをどうサービスしていくかは別チームにバトンするケースがほとんどだが、「顧客視点」で見た場合、一体化することが最善手。また顧客ステータスも一元管理し、常に変化に対応すべきであり、業務区分で分割管理するのは自社都合に過ぎない。こうした一体化はプロダクトとサービスを一貫したPDCAサイクルで改善し続けられるメリットも生むと言う。「今後企業はCRMからCLMへの変化を目指すべきです。顧客とのリレーションシップだけなら容易になった環境下において、顧客との継続的、永続的良縁関係を結ぶことによる事業の存続を目指すためには、RからL(ロイヤリティ)への転換が肝要と言えます」。
ダイレクトな顧客接点は、視点の異なる価値をもたらす
第4部では、ニューバランスジャパン 鈴木健氏、MasterCard 石中弘一氏、森永製菓 岩崎育夫氏、青山学院大学 小野譲司氏、大広 松浦信裕氏による、パネルディスカッションを実施。「顧客への“おもてなし”は、真のライフタイムバリューを高めるか」をテーマとした。「MasterCardではカード会員限定のコンサートなどを行い、体験価値を提供することで他社と差をつけています」と石中氏。また鈴木氏によれば、ニューバランスはマラソン大会参加者限定でランムービーを提供するなど、ランニング自体の価値を高める取り組みを行っているという。森永製菓の岩崎氏は、「顧客に新商品の“お試し隊”になっていただき、感想を掲示板に投稿してもらう企画や、“おすすめ隊”としてこちらが送った旬の商品を友達とのお茶会でPRしていただく企画を実施しています。お菓子も“顧客とつながる”ことで差異化を図る必要があります」と振り返った。
青山学院大学 小野教授は、3社の取組みについて「サービス業などと違い、本来直接の接点が少ない企業が、特別なおもてなしを行うのは意外性があり、人の感情に働きかけます。大企業はマスの顧客がいる中で特定の顧客に特別な体験を提供するからこそ効果的」と指摘した。松浦氏は「フェイストゥフェイスでの接点がない企業こそ接点を設ける価値があります。見落としてはいけないのは、お客さまの存在を意識することで社内のモチベーションも上がること。そうした部分も、施策を行う際のモノサシとして持つといいのでは」と締めくくった。
|
|
|
|
|
お問い合せ
株式会社大広 東京都港区赤坂5-2-20
https://www.daiko.co.jp/