商品の機能性による差異化が難しくなったと言われる現在。その商品(サービス)を使うことによって生まれる「感情」「経験」を伝え、深い共感を得ることが求められている。そうした「強い絆をつくる感動体験」に取り組む3社が登壇する特別セミナーが、8月25日、青山にて開催された。
自社が存在する価値を考える
自社が取り組む共創マーケティングについて講演したのは、ベネッセコーポレーションの橋本英和氏。社会・顧客・企業が共通で持つ問題をテーマに、それを解決する動きを企業活動のコアにしていくことを目指している。同社では生徒の成績を上げる、合格を得るといったことだけではなく、世の中の問題に対して、教育によって与えられる影響を考え、顧客との永続的なコミュニケーションの実現に向けたマーケティング活動を行っているという。
橋本氏がこうした視点を重視するようになったのは、東日本大震災後に出向いた被災地での体験によるところも大きい。「現地の人々は、復興するには10年や20年といった単位の時間がかかり、これから生まれてくる子どもたちや、いまの子どもたちが大きくなった時に、どのように復興するか、という考え方が大切であると言います」。こうした未来志向を持って教育について考え、子どもたちの将来に役立つ知識を届けることで、顧客とブランドとの絆を築いていきたい考えだ。
アプリで魅力をスムーズに伝える
アドビ システムズの岩本祟氏は、「モバイルを活用したブランド体験」について講じ、同社の「Adobe Digital Publishing Solution(以下DPS)」を紹介した。「DPS」は、モバイルアプリを作成・配信することができる製品で、すでに多数の企業が導入している。
例えば、キヤノンは紙のカタログではカメラやレンズといった商品の掲載数が十分ではなく、魅力やスペックが伝えきれないという課題があり、「DPS」を導入。カタログをデジタル化し、掲載商品の充実、魅力の訴求はもちろん、「交換レンズ選びの基礎知識」といった各種コンテンツも追加。店頭プロモーションとして使えるため、販売店からも好評を得ている。
また、コピー機を扱うリコーでは営業ツールとして使用したいという要望を持ち、「DPS」を取り入れた。コピー機は性能差の違いをわかりやすく説明することが難しい商材だったが、「DPS」によって、コピー機の操作パネルを再現し、疑似体験によって魅力を伝えられるアプリなどを作成。商談時に、瞬時に使いやすさ、分かりやすさを理解してもらえることで、営業成果も向上している。
現在、アドビ システムズでは「DPS」の無償体験版も用意。同製品による顧客接点の強化、ロイヤリティ向上、新規顧客獲得の実現をサポートしていく。
多様なニーズに応えるアプリ
リニューアルしたゼクシィアプリの事例をもとに、「花嫁に寄り添ったユーザーエクスペリエンス」について講演したのはリクルートマーケティングパートナーズの山崎吉倫氏。「結婚は多くの人にとって初めての体験であるため、編集記事の介在価値が高い領域。スマートフォンの普及に合わせ、よりユーザーとの接点が持てるアプリでコンテンツを強化しました」。ゼクシィアプリに掲載されている各記事にはタグが付いており、ユーザーがよく見る記事のタグをもとに“嗜好性”を解析し、各ユーザーのニーズに適した記事が表示される。また、「ダンドリチェック」というプロポーズ直後から式当日までに、いつ、なにをすればよいか分かるタスクチェックツールを用意し、その情報を活かし、「挙式1カ月前の人ならこの記事」と“検討段階”に合わせて記事が表示される。加えて、先輩花嫁達を「花嫁1000人委員会」として任命し、記事制作時にヒアリングを行い、意見を仰ぐことでコンテンツ力を向上。テクノロジーと編集力によってユーザーの隣に寄り添うようなアプリを実現し、ユーザーとの絆を深めている。
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