「横浜の展示をやって、最果(タヒ)さんと詩のホテルとか作れたら面白いなぁと思った」──2019年3月、グラフィックデザイナー佐々木俊さんが自身のTwitterで呟いたことが、12月に京都のHOTEL SHE, KYOTOで実現した。同ホテルの3室が、期間限定で「詩のホテル」をコンセプトにした部屋へと生まれ変わったのだ。
Twitterのつぶやきから実現
「詩のホテル」を実現したHOTEL SHE, KYOTO は、2019年3月に「最果てにある旅のオアシス」をテーマにリニューアルオープン。若きホテルプロデューサーとして注目を集めている龍崎翔子さんが手がけたホテルだ。今回、最果タヒさんがリツイートした佐々木さんのつぶやきを見た知人が、同ホテルスタッフに教えてくれたことがきっかけになったという。「以前から最果さんとご一緒できたらいいなと思っていたこともあり、話を聞いてぜひやりたいと思いました」と、龍崎さん。これまで音楽イベントなどを実施してきた同ホテルだが、こうしたコンセプトルームをつくったのは今回が初めてだ。
「私たちはホテルという場を、訪れたお客さまが発見や気づきを得られるメディアのような存在であると考えています。さらに言うならば、ホテルはお客さまが服を試着するような感覚で、ライフスタイルを“試着”できる場。それによって、これまで知らなかった価値観や新しい体験を得ることができる。また、新たなコンテンツを持ち帰っていただくことで、その方の人生の幅を広げることにつながればと考えています。その中で詩というコンテンツは、お客さまにとっても新たな体験になるのではないかと思ったのです」。
一方、これまで書籍や展覧会において最果さんの詩の世界を広げてきた佐々木俊さん。冒頭のつぶやきは、2019年に横浜美術館で開催された「最果タヒ 詩の展示」の最終日にTwitterに投稿している。「横浜美術館の展示では、詩のモビールをつくったり、背表紙に書いた詩を本棚に並べたり、従来の詩集の紙面から離れて、詩の新しい見せ方に取り組み、来場者から大きな反響を得ることができました。そのときに空間の中で詩を味わうことに面白さを感じ、これは美術館とは違う空間にも発展させることができるのではないか。まさに“詩に泊まる”、そんな体験ができたら面白いのではないかと、素直に思ったんです」。
こうした流れで最果さん、佐々木さん、HOTEL SHE, KYOTOが出会い、「詩のホテル」が具体的に動き始めた。「ホテルはどこかしら『非現実』と隣り合わせにあるものだと思います。そして、日常生活や自分という存在もまた、全て現実のものであるとは言えないのではないかと思っています。自分の感情や考えを、自分は、本当は表層的にしか捉えられていない。詩を読むことは、自分ですら知らない、底にある『自分』を知ることでもあるのかもしれません。現実ではあるけれど、非現実的でもある、そのあり方は、ホテルというもののあり方にとても近いのではと思いました」(最果さん)。
詩を偶然見つけるという楽しみ方
ホテルという場で、詩をどのように体験してもらうか。最果さんと佐々木さんはホテルという場における制限を見据えながら、ここでできることを話し合った …