目指したのは、10年後も新鮮で、100年後も残る施設
世界にファンを持つ、鋳物ホーロー鍋ブランド「バーミキュラ」。その製造・販売を行う愛知ドビーは、2019年12月、ブランド初の体験型複合施設「VERMICULAR VILLAGE」をオープンした。“最高のバーミキュラ体験”をテーマに、バーミキュラの料理の美味しさやブランドの世界観、メイド・イン・ジャパンのものづくりを体験できるブランドの発信拠点となっている。
空間がつくり出す 新しい「体験」型コンテンツ
映画館「グランドシネマサンシャイン」は池袋に昨年7月にオープンした。都内最大級の規模感もさることながら注力したのは空間づくり。そのシンボルとなったコンテンツは映像のシャンデリア「Lumiēre」と巨大ビジョンの映像作品「Motion Ceiling」だ。
「キュープラザ池袋」4階グランドシネマサンシャインチケットカウンター/エントランス
2019年7月19日にオープンした商業施設、「キュープラザ池袋」。飲食店や最上階のバッティングセンターなどからなる14階建ての建物のうち、4階から13階と大部分を占めるのは、12スクリーン、2443席を有する都内最大級のシネコン、「グランドシネマサンシャイン」だ。同12日に34年の歴史に幕を閉じた、同じく池袋にあった「シネマサンシャイン池袋」の後身に当たる。
グランドシネマサンシャインではシアター及び各階をそれぞれ「ハリウッド」「カンヌ」「ベネツィア」などの映画祭をモチーフとしてデザインし、4階のエントランス及びチケットカウンターはゴールドをメインとした高級感ある空間に。一部通路には赤いカーペットを敷き、名作映画140点のポスターを美術館のように展示した。
そんなこだわりのある空間で一際存在感を放つのが、ビジュアルデザインスタジオWOWが手掛けた、4階から5階にかけての吹き抜けの天井に設置された映像のシャンデリア「Lumiēre(ルミエール)」。加えて、12階のスカイラウンジの天井部に設置された巨大LEDビジョンの投影作品「Motion Ceiling(モーション・シーリング)」だ。
グランドシネマサンシャインを建設したのは全国にシネコンを展開する佐々木興業だ。同社とWOWは約2年前、鹿児島県にある「シネマサンシャイン姶良」で共にインタラクティブなARコンテンツづくりに取り組んだ。その関係から、今回WOWが建物全体のテーマに合うコンテンツづくりを担うことになったのだった。
「4階のチケットカウンターの空間演出、12階のLEDビジョン演出をメインに、シネマサンシャインのロゴデザインも含め、幅広く担当させていただきました。建設前の企画の時点からご一緒させていただいたので、映像を流すサイネージの形などから検討しました。」と話すのは、WOWのクリエイティブディレクター 工藤薫さんだ。「その中で4階のエントランス空間には何かシンボリックなものを置きたい、という話が出て。映像をベースとしたビジュアルデザインを得意とする私たちならではのものを考えました」。
そこで提案したのが、映像のシャンデリア「Lumiēre」だ。直径2.7メートル、重さ数百キロのこの装置は、一見すると透明な球体の中で何かが動き光を発しているかのようだ。しかし実際は本体は光っておらず、球体のスクリーンに鏡面仕上げで作られた47セットのボロノイ構造体が組み合わさってできている。4方向からプロジェクターで映像を投影することで鏡に映像を反射させ、シャンデリアのように見せる仕組み。トンボの羽やキリンの模様にも見られるとされる「ボロノイ構造」を採用したのは、反射した映像を表情豊かに見せるためだという …