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空間がつくり出す 新しい「体験」型コンテンツ

目指したのは、10年後も新鮮で、100年後も残る施設

VERMICULAR VILLAGE

世界にファンを持つ、鋳物ホーロー鍋ブランド「バーミキュラ」。その製造・販売を行う愛知ドビーは、2019年12月、ブランド初の体験型複合施設「VERMICULAR VILLAGE」をオープンした。“最高のバーミキュラ体験”をテーマに、バーミキュラの料理の美味しさやブランドの世界観、メイド・イン・ジャパンのものづくりを体験できるブランドの発信拠点となっている。

創業の地である愛知県名古屋市中川区の中川運河を望むロケーションにある「VERMICULAR VILLAGE」。

お客さまもスタッフも一緒に楽しめる場に

愛知ドビーが展開する「バーミキュラ」は、高い密閉性によって無水調理を実現し、素材の旨味を引き出すことができると人気の鋳物ホーロー鍋だ。そんなバーミキュラの魅力を存分に体験できる「VERMICULAR VILLAGE(バーミキュラ ビレッジ)」がオープンした場所は、創業の地である愛知県名古屋市中川区の中川運河沿い。施設は、レストランとベーカリーカフェがある飲食業態の「DINE AREA(ダインエリア)」と、フラッグシップショップ、ラボラトリークックブックライブラリー、クッキングスタジオ、オーナーズデスクなどがある物販・体験業態の「STUDIO AREA(スタジオエリア)」の2つのエリアで構成されている。

「VERMICULAR VILLAGE」のテーマである“最高のバーミキュラ体験”とは、何を指すのか。愛知ドビー代表取締役副社長の土方智晴さんは「バーミキュラを深く知り、満足感を得てから購入してもらうこと。毎日の暮らしでバーミキュラを楽しんでもらうこと。そして、継続的なアフターサービスによる安心まで、すべてを一番良い状態で体験していただくことこそ、“最高のバーミキュラ体験”です」と説明する。

そもそも「VERMICULAR VILLAGE」誕生のきっかけは、バーミキュラ発売後しばらくして耳に入った「他社の鋳物ホーロー鍋と変わらない」「味の違いが分からない」という声だった。「世界一、素材本来の味を引き出す鍋をめざして開発した製品で、使い方を理解してもらえれば、必ず美味しい料理ができるはず。他と同じと言われてしまっては、職人の努力がなかったことになってしまう。そこで、私たちが“最高”と思っているものをお客さまにきちんと伝える場が欲しいと考えました」と、土方さん。そのために不可欠な要素を、すべて落とし込んだのが「VERMICULAR VILLAGE」である。

バーミキュラの特徴を最大限に生かした料理を味わえるレストランやベーカリーカフェ。購入前に味や使い方を試すことのできるショップ。食に関する約3000冊の本を揃え、料理のイメージが膨らむライブラリー。バーミキュラを使用した料理教室を開催するクッキングスタジオ。「手料理と、生きよう。」というブランドスローガンに掲げているように、一番伝えたいのは手料理の楽しさだ。ここでバーミキュラを使ったさまざまな体験ができれば、購入後はどんな料理をつくろうかと考えることやつくることそのものが楽しくなるはずだ。「食材の組み合わせを考えてつくる“料理”は、とてもクリエイティブな行為。さらに、自分が生み出したものを人と共有することで、感動につながります」。

施設のオープンに向けて見据えたのは、「10年後も新鮮で、100年後も残る施設に」というビジョンだ。「この思いを共有し、ともに実現するため、クリエイティブや建築のチームが尽力してくれました」。施設クリエイティブディレクションとレストラン&カフェプロデュースをTRANSIT GENERAL OFFICE INC. が、インテリアデザインをLINE-INC. が担ったほか、ロゴやグラフィックデザインはvillage(R)が手がけるなど、多くのクリエイターが参加している。

バーミキュラというブランドを理解してもらうため、チーム全員に製作現場を案内し、自宅で実際に製品を使用してもらったという。おかげで、すべてがバーミキュラらしいものになった。

描いたビジョンを空間として具体化するにあたり、意識したのは“空気感”だ。良い空気感は、建築、インテリア、料理など、すべてが相まって生まれる。スタッフの笑顔、その場に合ったBGM。目に入るもの耳に入るもの、考えうること何もかもに手を抜かなかった。「家具や小物一つひとつを選ぶときの基準は、長く愛される機能的なデザインであるかどうか …

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