KISSME FERMEやヒロインメイクなどのメイクアップブランドで知られる伊勢半は、2020年度の就活解禁日である3月1日に「顔採用」の導入を日経新聞全面広告とWeb動画で発表した。

「顔採用」を掲げた新聞広告
発端は、メイクはマナーなのか論争
"顔採用"と聞くと美男美女が優遇される制度かと思ってしまうが、そうではない。メイクを自己表現のツールと定義し、「個性を抑えた就活メイクではなく、メイクを通じて本当の自分を表現してください」というメッセージが込められている。
顔採用を導入した経緯について、伊勢半デジタルマーケティング・広報宣伝部 部長 大町龍さんは「もともとはKISSMEブランドのブランディングプロジェクトから始まったものです」と話す。同ブランドでは昨年、"私らしさを、愛せるひとへ。"というブランドメッセージを再定義した。このメッセージを世の中に広げるための施策を検討していたところ、ブランディングプロジェクトを担当するチームから提案されたのが「顔採用」だった。
ブランディングプロジェクトで採用をテーマとした背景を、電通 コミュニケーションプランナー 吉川隼太さんは次のように振り返る。「この1~2年、"ノーメイクで出社することはマナー違反である"という意見から、SNSで"メイクはマナーか"という論争が繰り広げられ、ニュースにもなっていました。当初は、この課題をテーマにメッセージを考えていたのですが、あるときスタッフの中で"この問題って就活の現場でも起きているよね"と話題にあがったんです」。
「就活メイク」と言われる無難で画一的なメイクと、お揃いのリクルートスーツが定番になっている就活に対して、メイクアップブランドの伊勢半が問題提起をする──社会情勢の変化も、この企画を後押しした。これは昨年夏頃に企画したものだが、その年の10月に経団連が60年続いた就活ルールの廃止を発表している …