AIを活用した学習支援を行う「atama plus」は、昨年4月に誕生したばかりの教育系スタートアップ。事業を急速に拡大し、今年1月には5億円の資金調達を実現するなど注目を集めている。ホンシツのコピーライター斉藤賢司さんは、社名をはじめとする同社の言葉づくり全般を手がけている。
事業構想に共感し 言葉づくりを手伝うことに
ホンシツのコピーライター斉藤賢司さんは、AIを活用した教育系スタートアップ「atama plus(アタマプラス)」の社名やスローガンなど、会社立ち上げ時から言葉づくり全般に携わっている。atama plusを立ち上げたCEO 稲田大輔さんの前職は三井物産で、斉藤さんのクライアントだったことがご縁になった。
「ある日稲田さんから、会社を辞めて起業しますというメールをもらいました。そこに社名を考えるのに苦労しています、という話が書かれていて。その段階では事業内容は聞いていませんでしたが、独立のはなむけ代わりにネーミングだけでもお手伝いしましょうか?とお返事したのがはじまりでした」。
その後、稲田さんの事業構想を対面で聞き、そのスケールに驚いたという。目の前に出されたのは明治時代の中学校の白黒写真。先生が黒板に板書し、生徒たちが書き写すという見慣れた光景だった。
「海外ではAIを教育に導入するEdTechが進んでいますが、日本は150年前と授業風景が変わっていないと稲田さんは言います。理解度は生徒1人ひとり違うのに、一律で授業をするのは非効率だし、そもそも勉強が面白くならない。そこで、AIを使って勉強をパーソナライズするのが、atama plusのAIラーニングシステムです。それだけ聞くと一見個別学習などと変わらないようですが、ポイントは、AIが生徒のつまずきの原因をリアルタイムで解析し、理解に必要な別の単元までさかのぼってカリキュラムを自動生成すること。ムダをなくすことで学習時間を大幅に短縮できる。彼らは、センター試験レベルの内容の習得時間を半分以下にできると試算しています。その分できた時間で、例えば日本人が苦手なディベート力を上げて国際競争力を高めたり、部活や恋愛に打ち込むことだってできる。こうして生徒の生きる力を真の意味で伸ばすのがミッションだと言うんです」。
この事業に大いに興味が湧いた斉藤さんは、社名以外の言葉の領域も手伝いたいと自ら申し出た。
メディアの記事に残したいキーワードからスローガンを設定
最初に考えたのは、ネーミングだ。社名とサービス名を分けることも検討した上で、効率を考え社名を「atama plus」、サービス名を「atama +」とした。「基本はサービス寄りです。コンテンツ的な楽しさを意識し、生徒に親しみを感じてもらえるよう設計しました」。「+」の記号をつけたことで、「+Personalization」「+Innovation」など、従来の教育との違いを説明する際に、わかりやすく展開できるよう考えている。
次に考えたのはスローガンとステートメントで、「AIで、一人ひとりに、最短で『わかる!』を。」というものだ。
「稲田さんに『AIが大事なんですよね?』と聞いたら、そうではない、AIはあくまで手段で、1人ひとりに最適化したパーソナライズな学びがポイントだと答えが返ってきました。でも、今はAIを打ち出した方が世の中の引きは強いはず。スローガンは数年後に変えてもいいので、AIという言葉を使ったほうがいいと言って。さらに、『最適化』も個別学習塾との差がわかりづらいので、ベネフィット感のある『最速』か『最短』にしましょうと提案しました。最速は授業のスピードが速いように思われる(カリキュラムについていけないのではと心配される)ということで、最短をおすすめしたんです」 …