それは、誰に届ける言葉? 言葉のミッションが 多様化している
かつてテレビCMや新聞広告に乗せて全国の老若男女に届けられていた企業の言葉。デジタルの台頭や情報流通の変化によって、その姿かたちを変化させている。
広告を超えて広がる言葉の現在形
商品名を「ベーコンポテトパイ」から「ヘーホンホヘホハイ」へと大胆に変更したマクドナルドのキャンペーン。企画したコピーライターの田中雅之さんが意識したのは、面白さとおいしさを兼ね備えることだったという。
「ヘーホンホヘホハイ」パッケージ。
1990年から2002年までレギュラーメニューとして販売され、ホットアップルパイと並ぶ2大人気パイとして親しまれてきたマクドナルドのベーコンポテトパイ。レギュラーメニューでの販売終了後もたびたび復活するほどに根強い固定ファンがついている商品だ。
最近復活したのは、昨年10月。その際は「ヘーホンホヘホハイ」と大胆にネーミングを変更し、大きな話題を呼んだ。このキャンペーンを担当したコピーライターの田中雅之さんは、「ベーコンポテトパイは2016年にも販売されて、そのときも完売したと聞きました。今回、クライアントからは『今年は前年を大幅に上回る販売数を目標にする予定なので、達成するためには既存ファン以外の層を巻き込む必要がある。その方法を考えてほしい』と言われました」と振り返る。
ファン以外の層とは"若者層"のことだ。2002年までレギュラーメニューとして販売していたベーコンポテトパイのことを知らない若者は少なくない。「食べたことがない若い人は商品名と写真しかヒントがありません。そのため、ベーコンポテトパイが復活すると固定ファンには喜んで買っていただけますが、若者は興味を示しにくいという状況が続いていたそうです」。クライアントからのオリエン内容は、若者へのリーチであり、ネーミング変更に関する話は全く出ていなかったという。
企画を考えるうえで意識したのは、「面白い」と「おいしそう」を両立させることだ。「以前、マクドナルドの別の商品のキャンペーンを担当した時に、プレゼンの場で"企画自体は面白いけど、おいしそうじゃない"と言われた経験があります。だから今回こそは、その2つを両立した提案をしようと思ったんです」。
その結果、思い浮かんだのがネーミング自体を変えてしまうというアイデアだった。「アツアツのおいしいものを食べる時って、うまくしゃべれなくて、"ホィヒイ"ってなりますよね。だから、それを表現するネーミングにしてCMやPOPをつくったらどうかと思ったんです。実際に『ヘーホンホヘホハイ』と字で書いてみたら、全部ハ行だからパンチ力があった。面白いものになる可能性を感じました」 …