広告から企業の経営に必要な言葉に目を向けると、そこにはどんなトレンドがあり、どんな言葉が必要とされているのだろうか。コーポレートブランドのコンサルタントとして企業理念やスローガン等の開発を手掛ける電通の望月真理子さんに話を聞いた。
中期経営計画に連動したコーポレートスローガンが増えている
「広告やマーケティングで使われる言葉と、コーポレートブランディングで使われる言葉の違いは、顧客以外にも市場や社会の幅広いステークホルダーを対象にしているということです(図1)。コーポレートブランディングは経営そのものであり、そこで使われる言葉はすべて経営を支援する言葉ということになります。経営に関わる言葉、と一口に言ってもたくさんの種類があり、その形も呼び方もさまざまです。『企業理念』は企業における憲法のような言葉で、会社が何のために存在しているかという存在意義や永続的な目標を言語化しています。そして、3年、5年、10年後に、何をどんな形で実現していくかを示すのが『経営計画(中期経営計画・長期経営計画など)』と呼ばれるものです。数値目標だけでなく、それを実現した姿はこうである、と定性的な像を描いたものが『ビジョン』として打ち出されます。また、この図で企業と社会の接点に位置するのが、『コーポレートネーム(社名)』『コーポレートスローガン』『VI』の3つです。社名は軽々と変えるものではありませんが、コーポレートスローガンは中期経営計画(中計)と連動して変えるケースが近年増えています」と電通のPRプランニング局 望月真理子さんは説明する。
例えば、最近の例の1つにダイハツがある。ダイハツは昨年3月に2017~25年までの中長期経営シナリオ「D-Challenge 2025」を策定した。同時に、グループスローガンを「Light you up」に刷新し、ブランドビジョンとブランドステートメントも改めている。これからの新しいダイハツが目指す姿を社内外で共有するための言葉だとWebサイトでは説明されている。
「スローガンはインナー・アウターの双方に向けて発信されるものですが、中計と連動しているということはつまり、社員が自社のスローガンを見て、自分たちが目指す目標をリマインドする役割が大きいということです。経営を支援するという観点で一番大事なのは、社員が目標や価値観を共有しながら、生き生きと高い生産性をもって仕事をすること。だから、社内外に向けた言葉ですが、やはり大事なのは社内です。社外に対しては、その結果生まれる我々のサービスをそういう視点で見てください、というメッセージになります」。
最近、BtoB企業がスローガンを打ち出す広告を盛んに行うのも、インナーのモチベーションアップを狙っていることが多いという。「新聞に15段広告を出して見られるのでしょうか?と聞かれることがありますが、確実に見るのは、まずその会社の社員です。また、取引先企業などから『御社の広告を見ましたよ』と声をかけてもらうことで、社員は新しいモチベーションを持ってスローガンに取り組むようになります」。公に言ったからにはやらなければと、「有言実行」のマインドを生むという …