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広告を超えて広がる言葉の現在形

デジタル時代の広告コピーのあり方とは?

並河 進(電通デジタル)

日々進化するデジタル広告の中では、コピーの果たす役割、あるいはコピーライターの仕事はどう移り変わっているのか。電通デジタルの並河進さんにその最前線を聞く。

広告の設計図となる言葉をコピーライターが考えている

「デジタル広告の一番のポイントは、1人ひとりの状況に寄り添えるということです。広告を見る人のカスタマージャーニーの状況に合わせ、コピー設計をしています」と電通デジタル アドバンストクリエーティブセンター部門長の並河進さんは説明する。デジタル広告の中でコピーライターの役割は、アウトプットとしてのコピーを書くことに留まらない。今電通デジタル内でコピーライターが行っているのは、マーケティングファネルのそれぞれの段階に適したメッセージ開発だという。

トップファネル、ミドルファネル、ボトムファネル、それぞれの人にどう呼びかければ態度変容に結びつくかのアプローチをメッセージとして言葉にまとめ、そこから広告コミュニケーション全体の構造が構築されていく。いわば"広告の設計図としての言葉"を考える役割を果たしている。

「メッセージ開発は、コピーになる前の段階の、What to Sayに近い部分だと言えます。メッセージが決まって、最終的にコピーとして出していく時には、今度は色々な言葉のバリエーションを作ってアイデアを広げ、実際何が響くのかを出稿してテストしながら検証していきます」。特に、ミドルファネルにいる人にはターゲットごとに自分ごと化を促すような内容を呼びかけていくことが有効だという。ミドルファネルのターゲットに合わせコピーを出し分けた1つの例として、同センターCDの小林慎一さんが手がけたスバル インプレッサのWebCMを並河さんは挙げる。

インプレッサは最高レベルの安全性をセールスポイントとする。トップファネル向けのテレビCMでは、進化した安全性を、運転する妻と助手席の夫の視点で伝えている。ミドルファネル向けに当たるWebCMは、女性向けと男性向けに分けて展開。女性ターゲットのWebCMでは、娘を乗せて運転中の妻がインプレッサの運転サポート機能の頼もしさを実感し、「運転のハードルが下がっちゃいました」「夫より頼りになるかも」と感想を漏らす。運転を苦手と感じやすかったり、ぶつけることに恐怖心を抱きやすい女性に響くクリエイティブになっている。

男性向けのCMは2つの方向性があり、1つはクルマのデザインへのこだわりを解説し、クルマ好きの男性の心をくすぐるもの。もう1つは、運転する夫を眺めながら助手席の妻が「このクルマにしてから、パパ運転うまくなったねーって娘と話してたんです」と感想を話すものだ。こちらは、家族を大事に想う父親に響くクリエイティブになっている。

「車は購入までの比較検討期間が長いので、ミドルファネルの段階が厚い。だから彼らに自分ごと化してもらう施策が大事になります。これが日用消費財のお菓子であれば、逆に検討期間が短いのでまた違った設計が必要になります」 …

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