広告マーケティングの専門メディア

           

広告企画

クライアントの先にいる顧客を深く理解する 大広が中期経営計画で目指すものとは?

泉 恭雄氏(大広)

2023年4月に泉恭雄氏が社長に就任した大広では、これからの広告会社のあるべき姿を模索し、改革を実行中だ。社員主導による新たなパーパスの策定やそれに基づく中期経営計画、さらに足元では組織改革がすみ、変革のスピードが加速している。大広は今、何を考え、どこへ向かうのか。泉社長に聞いた。

大広
代表取締役社長
泉 恭雄氏

1992年4月大広入社。2016年大阪第3営業局長、2019年執行役員、2021年Hakuhodo DY Matrix 副社長、同年大広取締役執行役員を経て、2023年4月より代表取締役社長。

社内の有志が参加しパーパス策定プロジェクトを実施

企業が広告会社に期待する役割も機能も、大きく変化している。クライアントが何を求めているのかをイメージし、最適なソリューションを提案していくためにはこれまでのビジネスモデルをも変革するようなチャレンジが必要とされる。こうした国内の市場環境を見据え、2023年4月、大広は経営体制を刷新。当時53歳の泉恭雄氏を社長に起用し、事業変革の推進役とした。

泉氏は、社長就任前の2022年12月に大広の新しい未来をデザインするプロジェクトを立ち上げた。参加した社員からは、大広で働く意味や目的について、共通認識となるものを持ちたいという想いが寄せられた。そこで社長就任後の5月には新たなパーパスの策定プロジェクトを発足。メンバーは公募し、全ての社員が参加可能な議論の末「想いに火をつけ、ともに想像以上の未来を。」というパーパスを策定した。

大広ではこれに先立つ2019年に企業フィロソフィーを「Ideas Win」から「我々は、企業と顧客と、社会を敬愛する」に刷新。クライアントに提供する価値だけでなく、社会における役割を再定義していた。さらに、前述のパーパスの策定と合わせミッションとバリューの見直しを行った。ミッションは「顧客と社会に愛され続けるブランドを企業の志と共に創る」、バリューを「真の『顧客価値』の創造」と設定し、それを生み出すためのケイパビリティとして「Deep Dialogue Design(深層対話)」を強みとしようとしている。

これらの指針を礎に、2024年度からは新たな中期経営計画がスタートする。泉氏は「中計の対象となる8年後まで見据え、まずは最初の3年間で大広への強い期待値を生み出したうえで、事業モデルをトランスフォームしていく」と語る。

新規獲得からロイヤル化まで フルファネルで支援する体制に

近年は、従来BtoBtoCモデルが中心だったメーカーもECなどのダイレクトビジネスに参入するなど、多くの業態でダイレクトマーケティングの知見が必要とされている。こうした流れのなか、大広はダイレクトマーケティング領域に強みを発揮する会社としてのポジションを確立してきた。

ダイレクトマーケティング領域では従来、広告会社が得意としてきた新規顧客の認知獲得のサポートのみならず、既存顧客のリテンションなど、CRM領域のサポートも必要とされる。それゆえ、この領域で支持され続けるためには、クライアントの先にいる顧客に対する深い理解が求められる。泉氏は「私たちに期待されるのは、クライアントが表面的に望むことを形にするだけでなく、その先にいる顧客を理解し、顧客にとって価値ある提案を通じ、事業やブランドの価値を高めることにある。社員には、クライアントの顔色を見るのではなく、その先の顧客や社会を見据えた提案をしようと発信している」と話す。

昨今は人口が減少する日本の市場を見据え、マーケティング予算を新規獲得だけでなく、既存顧客との関係性強化にシフトさせる企業も増えつつある。大広でも「フルファネルマーケティング」を標ぼうし、購買後のサポートまで含めたソリューションを強化してきた。一方で、泉氏は「既存顧客は、売上を支えるだけでなく、新規層に推奨してくれるアンバサダー的存在でもある。加えて、フルファネルマーケティングをサポートする中で、顧客のロイヤル化のプロセスがデータを基に理解可能に。その理解がLTVの高い顧客に新規にアプローチする際の戦略にも活かされるようになってきている」とも語る。

こうした同社のサービス基盤はクライアントに伴走し、顧客理解を深めてきたことで養われてきた力だ。しかしデータを用いて顧客を理解する大広ならではの力はこれまで明確に言語化されていなかったことから、泉氏は体系的なメソッド「Deep Dialogue Design(DDD)」をまとめた。「DDDを基盤としたフルファネルのマーケティング支援をさらに強化していく」という。

生成AIの活用も進め ワン・トゥ・ワンの実現を支援

近年の広告業界の変化は、クライアントの市場環境の変化によるところも大きい。インターネットの登場とテクノロジーの急速な進化は、企業と生活者の間にあった情報格差をなくしただけではなく、生活者も情報を発信できるようになった。泉氏は「今までマスでとらえていたお客さまをもう少し小さい集団で捉え、究極的にはワン・トゥ・ワンマーケティングを実現しなければ、コミュニケーションの最適化が難しいメディア・情報環境にある」と指摘。そこで企業と生活者をつなぐ、AIを活用したソリューション「Brand Dialogue AI」の開発にも着手。また、独自開発の「顧客価値指標」によってブランド価値の見える化も行ない、テクノロジーやデータによるマーケティング支援の手法を磨き続けている。

構想、実装、伴走の3つの力が最大限発揮できる体制をつくる

各種ソリューション、メソッドの整備だけでなく、足元では組織の変革も行ってきた。今年2月にはクライアントに対する支援体制をより強固にするため、クリエイティブ部門が分社化した大広WEDOに置かれていた戦略CDの機能を大広へ戻すことも含めた組織変更も行った。

「私たちの強みは『戦略構想』『実装領域』『伴走領域』にある。だからこそクリエイターには広告の制作にとどまらず、CXやフルファネルCDに進化してほしいし、マーケターにはフルファネルマーケターへと成長してほしい。戦略を構想するだけでなくて実装や伴走も見据えた全体の設計をし、そこを強みとして認知を獲得していきたい」。

今年度からスタートする中計の策定に際して、さらにその先の中計が終了する8年後まで見据えた議論を行ったという泉氏。この議論の中で、泉氏は2つの事業イメージを持つに至ったという。ひとつがクライアントとの事業共創だ。「大企業のカーブアウトやスタートアップなど、さまざまな方法が想定されるが、クライアントと対等な立場で事業化し、スピード感を持って成長への道を切り拓くことにチャレンジする」。

2つ目がソーシャル領域に特化した事業開発。パーパスやミッションに基づき、社会の一員として貢献するとともに、社内に存在する起業家精神を持ったメンバーの活躍の場として活用することを考えている。

いずれも、広告代理業、マーケティング支援業以外の収益モデルの確立を目指す試み。これらの新たな事業開発構想に本気で取り組み、その実現を第二の創業ととらえ、意欲を見せる。顧客への深い理解をもとに、クライアントの未来をつくる取り組みを社員とともに進めていきたいと泉氏は語った。

    お問い合わせ先

    株式会社 大広 総務局広報チーム

    EMAIL:info@daiko.co.jp
    TEL:03-4346-8111
    URL:https://www.daiko.co.jp/

無料で読める『本日の記事』をメールでお届けいたします。
必要なメルマガをチェックするだけの簡単登録です。

お得なセットプランへの申込みはこちら

広告企画 の記事一覧

営業を「ビジネスプロデューサー」に改称して6年「IGP」を掲げる電通に流れるカルチャー
クライアントの先にいる顧客を深く理解する 大広が中期経営計画で目指すものとは?(この記事です)
バリューチェーンを包括的に捉えた 東急エージェンシーの「広告事業変革」
急成長を遂げる「変革支援」のプロ集団 DXとデジタルマーケティングで企業変革を加速
いま必要なのは「関係性のリデザイン」 ウェルビーイング基点で新しいつながりをつくる
エリア×リレーションシップで新たな提案 50年超の折込広告の知見をデジタルに生かす
全員が同じ方向を向いて課題を解決する仕組み 根幹にあるのは“広告ビジネス”への原点回帰
店内ビジョンとアプリで新商品の売上が7倍!1stPartyデータ活用で、効果の最大化を支援
全社でCXを推進する三井住友海上火災保険 ヴァリューズと共に顧客理解を実現
オンワードのEC成長を支える鍵は?RTB Houseと実現する「顧客獲得」と「ロイヤル化」
「@cosme」と「MimiTV」が業務提携 美容業界に一気通貫の流れを生む最強コラボ
XとDoubleVerifyが協働 インフィード広告の安全性と適合性を担保し、安心の広告環境を
なぜ今「POEプランニング」なのか?強固なファンベースで持続可能な広告運用を
非日常空間での体感・体験型コミュニケーション 心を動かし、マーケティング効果の最大化を狙う
企て・伝え・こしらえるサイクルでサステナブル活動を事業成長につなげる
生活者のくらしを現場で徹底追跡!N=1を深掘りする「くらし・まちマーケティング」
人の心を動かし、行動を喚起した秀逸アイデア「第38回 全日本DM大賞」受賞作品を発表!
電車の中のテレビ局、4月1日開局 自社で番組制作を行うjekiの試みとは?
オリコムとトライバルメディアハウスが協力し、デジタルシフトが進む世界で新たな体験設計を
産学連携プロジェクトで見えた、交通広告のプランニング・価値の示し方
大型ビジョンで配信する「飛び出す3D広告」キャラに会える場所をつくり格別の感動体験を
フィジカルとデジタルをひとつに捉え 人・時・場に応じた最適な配信を行う
大阪万博に向かう車両全体をラッピング「まるごとジャック」でSNSでの拡散に期待
今の自分に足りない経験を考えれば、目指す場所への道は自然と見えてくる
企業のストーリーを描く起点「ブランド人格」を定義して、愛される企業になる
「あったらいいな」を超えるサービスを届けたい!セブン銀行グループ22人の挑戦
良い意味で「公私混同」 素の自分が情熱を注げる領域で仕事をする
データ利活用のハードルはどこにある?ENEOS、学研HD、ファンケルのマーケターが議論
Molocoの機械学習を活用したモバイル広告DSP事業
目の前のことを頑張れる人にだけ次の扉は開かれる
「熱中度」「習慣度」「信頼度」で価値を可視化 メディアコンテンツの力をスコア化する調査とは?
ベンチャー志向だった私が「歯車」となって会社を動かす楽しさを知った
ゲーム感覚で見込み顧客創出にチャレンジ!意識改革につながるNexalのRPG型研修
右肩上がりで成長を続ける「TVer」「地上波+配信」で広告価値の更なる進化を
宣伝会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する