広告マーケティングの専門メディア

           

広告企画

全社でCXを推進する三井住友海上火災保険 ヴァリューズと共に顧客理解を実現

後藤賢治氏(ヴァリューズ)、木田浩理氏、日ノ澤恵莉氏(三井住友海上火災保険)

国内250万人の消費者モニターパネルを基に、様々なサービスを展開するデータプラットフォーマーのヴァリューズ。独自のメソッドで、誰でもわかりやすく簡単に顧客理解ができるツールを開発してきた。同社のツールを導入し、社内のCX戦略を推し進めてきた三井住友海上火災保険・CXデザイン部の2人に、その活用方法を聞いた。

左から
三井住友海上火災保険 CXデザイン部 データマーケティングチーム 課長 日ノ澤恵莉氏
三井住友海上火災保険 CXデザイン部長 CMO チーフビジネストランスレーター 木田浩理氏
ヴァリューズ 取締役副社長 後藤賢治氏

マーケター目線の切り口でWeb行動データをビジュアライズ

─木田さんはデータサイエンティストとして三井住友海上火災保険に入社し、2021年10月、同社初のCMOに就任されました。御社ではこれまで、どのようなデータ活用を行ってきたのでしょうか。

木田:代理店ビジネスが中心だった保険業界においても、近年はお客さまがデジタルを通じて直接情報を得る機会が増えてきています。当社では2021年、経営企画部の中にまずマーケティングチームを設置し、2023年4月には「CXデザイン部」として取り組みを拡大させました。CDPのデータを基盤としてデジタルマーケティングを推進しています。日常で意識することが少ない損害保険という商材は、例えば自動車や家を買ったときにそのまま勧められた保険に入ることが多いです。

しかし、Webを通じた情報収集が一般化する昨今、損害保険業界も現在の環境に依存しすぎず、いかに消費者にブランドを想起いただくか、私たちのブランドを指名いただけるかという点が重要な課題となっています。

しかし、ブランド想起を高めるために、テレビCMを使うとしても、訴求軸やターゲットの設定は商材によって全く異なるため、顧客理解や競合理解に基づく緻密なメディアプランニングやクリエイティブ戦略が必要となります。そのような3C分析を行う際の突破口として、ヴァリューズさんのデータは大変重宝しています。

─ヴァリューズが提供しているツールについてお聞かせください。

後藤:当社では、明確な許諾を得た国内で250万人規模の消費者モニターパネルを独自で保有しています。モニター会員から送られる毎日のWeb検索・閲覧データを、性別、年代など属性情報の付随した消費者Web行動ログデータとして管理。これらを企業の皆さんがお手元で簡単に分析できるように、ツールとして提供しています。そのツールのひとつが「Dockpit(ドックピット)」で、誰でも簡単に3C分析ができるプラットフォームです【図1】

また、Web行動データとアンケートデータを紐づけた「story bank」では、消費者の検討背景やニーズ、購入アクションを起こすきっかけを、定量的に分析・把握することができます。開発に際してこだわったのがシンプルさの追求です。

性別や年齢、エリアなど、マーケターがユーザー分析する時と同じ軸でデータを可視化しています。通常、こうした調査には費用や時間がかかるため、データ分析を行う際のひとつの壁になりかねない。しかし消費者行動や競合の状況は、本来は常に考え続けるべきもの。見たい時に一瞬で情報が分かるような、UI/UXを追求しました。

日ノ澤:私はデータ分析に関しては初心者だったのですが、この「Dockpit」は、データの構造がビジュアルでパッと分かる。

そこから「じゃあ別の角度で見たらどうなのか」と、さらに調べて深堀りしてみたくなるんです。

後藤:私はデータが大好きな人間なのでつい、ツールも複雑な設計にしてしまいがちなのですが(笑)、開発当初よりかなりシンプルになっていると思います。

図1 Dockpit分析画面

─三井住友海上火災保険さんにおける具体的な活用方法をお聞かせください。

木田:私は、ヴァリューズさんのツールを前職の通販会社で活用していたのですが、当社での導入にあたって、まずはこのデータで何ができるのかを社内に示す必要がありました。最初に行ったのは当社の「1DAY(ワンデイ)保険」契約に至るまでのWeb行動の可視化です。そこを突破口として、顧客理解の重要性を示しました。

後藤:ツール以外の部分でも、三井住友海上火災保険さんが保有しているデータもお預かりしながら、データ分析のサポートもさせていただいています。

日ノ澤:例えば「Dockpit」を使い、当社のWebサイトを訪問するユーザーの状況を分析すると、競合他社の保険会社のWebサイトも複数見ていることがわかりました。代理店から勧められたとしても、一度は自分で比較し、調べていることが分かったんです。他社と比較して当社の優位性が伝わる内容になっているか、Webサイトの整備の必要性をあらためて実感しました。また、「storybank」を活用すると前後のWeb接触内容からユーザー心理の理解に役立つので、グループインタビュー前の仮説設計にも活用しています。

専門家でなくても日常的に顧客理解ができるように

─CX戦略を加速させていくにあたって、社内研修も多数実施されているそうですね。

木田:はい。経営層から若手まで、外部講師も呼びながら、数百人規模の研修を年間10回以上実施しているほか、個別に勉強会も開催しています。

後藤:当社では広告運用やSEO対策など、社員向けの研修もつくっているので、そこでももしかするとご一緒できるかもしれません。

木田:研修で必要なのは、実際に手を動かすこと。ツールの使い方というよりは、そういった各専門分野の切り口から落としこんでも良いかもしれませんね。

─ヴァリューズの今後の展望についてお聞かせください。

後藤:私たちのツールは、データマーケティングや商品開発に生かしていただくほか、企業のマーケティング支援を行う会社の営業部や、プランナーからの相談もあります。例えば「Dockpit」では営業先の業界の情報収集をしたうえで、「storybank」のデータを背景にコンテンツマーケティングを支援するという使い方があります。

また現在、大学のゼミと連携した取り組みも行っていますが、研究で活用いただくだけではなく、就職活動における業界研究にも役立つのではないでしょうか。

いま、業界・業種問わず求められているのが、顧客体験の理解。私たちのツールを通して、データマーケターでなくても、日常的にデータを活用できるような世界をつくっていきたいと考えています。

無料で読める『本日の記事』をメールでお届けいたします。
必要なメルマガをチェックするだけの簡単登録です。

お得なセットプランへの申込みはこちら

広告企画 の記事一覧

営業を「ビジネスプロデューサー」に改称して6年「IGP」を掲げる電通に流れるカルチャー
クライアントの先にいる顧客を深く理解する 大広が中期経営計画で目指すものとは?
バリューチェーンを包括的に捉えた 東急エージェンシーの「広告事業変革」
急成長を遂げる「変革支援」のプロ集団 DXとデジタルマーケティングで企業変革を加速
いま必要なのは「関係性のリデザイン」 ウェルビーイング基点で新しいつながりをつくる
エリア×リレーションシップで新たな提案 50年超の折込広告の知見をデジタルに生かす
全員が同じ方向を向いて課題を解決する仕組み 根幹にあるのは“広告ビジネス”への原点回帰
店内ビジョンとアプリで新商品の売上が7倍!1stPartyデータ活用で、効果の最大化を支援
全社でCXを推進する三井住友海上火災保険 ヴァリューズと共に顧客理解を実現(この記事です)
オンワードのEC成長を支える鍵は?RTB Houseと実現する「顧客獲得」と「ロイヤル化」
「@cosme」と「MimiTV」が業務提携 美容業界に一気通貫の流れを生む最強コラボ
XとDoubleVerifyが協働 インフィード広告の安全性と適合性を担保し、安心の広告環境を
なぜ今「POEプランニング」なのか?強固なファンベースで持続可能な広告運用を
非日常空間での体感・体験型コミュニケーション 心を動かし、マーケティング効果の最大化を狙う
企て・伝え・こしらえるサイクルでサステナブル活動を事業成長につなげる
生活者のくらしを現場で徹底追跡!N=1を深掘りする「くらし・まちマーケティング」
人の心を動かし、行動を喚起した秀逸アイデア「第38回 全日本DM大賞」受賞作品を発表!
電車の中のテレビ局、4月1日開局 自社で番組制作を行うjekiの試みとは?
オリコムとトライバルメディアハウスが協力し、デジタルシフトが進む世界で新たな体験設計を
産学連携プロジェクトで見えた、交通広告のプランニング・価値の示し方
大型ビジョンで配信する「飛び出す3D広告」キャラに会える場所をつくり格別の感動体験を
フィジカルとデジタルをひとつに捉え 人・時・場に応じた最適な配信を行う
大阪万博に向かう車両全体をラッピング「まるごとジャック」でSNSでの拡散に期待
今の自分に足りない経験を考えれば、目指す場所への道は自然と見えてくる
企業のストーリーを描く起点「ブランド人格」を定義して、愛される企業になる
「あったらいいな」を超えるサービスを届けたい!セブン銀行グループ22人の挑戦
良い意味で「公私混同」 素の自分が情熱を注げる領域で仕事をする
データ利活用のハードルはどこにある?ENEOS、学研HD、ファンケルのマーケターが議論
Molocoの機械学習を活用したモバイル広告DSP事業
目の前のことを頑張れる人にだけ次の扉は開かれる
「熱中度」「習慣度」「信頼度」で価値を可視化 メディアコンテンツの力をスコア化する調査とは?
ベンチャー志向だった私が「歯車」となって会社を動かす楽しさを知った
ゲーム感覚で見込み顧客創出にチャレンジ!意識改革につながるNexalのRPG型研修
右肩上がりで成長を続ける「TVer」「地上波+配信」で広告価値の更なる進化を
宣伝会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する