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オンワードのEC成長を支える鍵は?RTB Houseと実現する「顧客獲得」と「ロイヤル化」

石原立也氏(RTB House Japan)、小泉雄也氏(オンワードデジタルラボ)

最先端のAIディープラーニングを活用したデジタルマーケティングテクノロジーを提供するRTB House。同社は2018年から大手アパレル企業であるオンワードと連携し、売上拡大やLTVの最大化など、様々なマーケティング課題の解決にアプローチしてきた。プロジェクトを牽引するオンワードデジタルラボの小泉氏、RTB Houseの石原氏に単発的な新規顧客の獲得のデジタルマーケティングではなく、中長期で企業成長につながる顧客との関係性を重視したEC事業戦略について話を聞く。

(左)RTB House Japan
アカウントマネージャー
石原立也氏

(右)オンワードデジタルラボ
デジタルマーケティングDiv.
デジタルストラテジーSec. クリエイティブチーフ
小泉雄也氏

単純な獲得効率向上ではなく高LTVの新規顧客獲得が目的

─お二人の担当領域とは。

小泉:オンワードHDのデジタル推進を担うオンワードデジタルラボで、自社EC「オンワード・クローゼット」のマーケティング全般と社内のDXを推進しています。

石原:RTB Houseの日本法人で、アカウントマネジメントを担っています。当社が提供するのは、Webやアプリ上におけるリターゲティング広告を配信するDSP。高いディーブラーニング技術が強みで、この技術力によって、効果に影響を与える要素であるクリエイティブ、フィードデータ、タグ情報、広告配信先などを判断・判別し、最適化された広告配信が可能になります。

─オンワードでは近年OMO戦略を推進し、EC事業を伸張させています。

小泉:2022年のアパレルECの市場規模は約2.5兆円を突破し、EC化率も約2割と、コロナ禍の影響もあり「洋服を通販で買う」ということが一般的になりつつあります。こうした市場トレンドも影響して、当社が運営する「オンワード・クローゼット」も順調に売上を伸ばしています。「オンワード・クローゼット」は、多彩なブランドがひとつの売場に揃っていることが特徴。ここで買いたい」と思っていただけるよう、サービスやマーケティング施策を磨いて、他社にはない顧客体験を届けたいと考えています。

─EC事業におけるデジタルマーケティング施策についてはどのようにお考えですか。

小泉:広告配信に関しては、近年その目的を大きく変えました。元々は直接売上にどれだけ貢献しているかを見ていましたが、今フォーカスしているのは、新しいお客さまとの出会いをつくること。まず知っていただき、我々のブランドやサイトを思い出していただく機会をつくり、購入を検討している方には最後のひと押しをする。

未認知状態から初回購入までの様々なフェーズにいるお客さまに対して、適切な手段と評価を細かく使い分けることで、施策の精度を上げています。課題は、いかに継続的に購入をしていただけるか。初回の獲得効率が多少悪くなったとしても、2回目、3回目と継続的に購入いただくことで中長期的に黒字化していくことが必要でした。

石原:当社が提供するのはリターゲティング広告なので、一度接点を持っていただいたお客さまを効率的に、正確にターゲティングして売上をつくる、ROASの最大化が一番得意な領域です。ですがLTVを高めるという課題に対しては、単純によくサイトに来訪しているお客さまにひたすら広告を当てて買ってもらえればOKというわけではない。オンワードさんの場合は、初回購入者に対して適切な頻度やタイミングで広告を配信するという施策を行ってきました。具体的には、初回購入のROASをKPIとして、広告配信を実施しています。

まずECサイトにカスタムタグを設置していただき、サイト内での購入回数をフィードバックしてもらう仕組みをつくっています。そこで1回購入されたお客さまはあえて除外し、サイトを訪れたものの1回も購入していないお客さまに対して、ターゲティング配信を実施してきました。加えてオンワードさん側で管理されているGoogleアナリティクスの売上データもつなぎ、KPIに沿って配信を最適化していきます。

これにより、初回購入者の売上の最大化を通して、高LTVユーザーの獲得を実現しています。

小泉:コロナ禍においても適宜、ROAS目標を調整して広告の配信は継続し、RTB Houseさんと取り組んだこの5年間で、配信規模は209%成長しました。このほか、サイト施策に沿ったクリエイティブのフォーマットを作成し、バナーを配信しています。

石原:計測タグの実装はオンワードさん側で行っていただく必要があり、実は手間がかかるもの。そこまで踏み込んだ事例はなかなかなく、オンワードさんの協力があってこそ成り立っている施策です。オフラインだけでなくオンライン上でも、一人ひとりのお客さまに対してどんなふうに「接客」していくかを追求されていく姿勢に、私個人としてもやりがいを感じています。

Googleへの技術提供で業界全体の広告品質向上に寄与

─クッキーレス時代を迎えた昨今、デジタルマーケティングはどのように変化していくのでしょうか。

石原:3rdパーティクッキーの利用規制に伴って、広告主・メディア共にリターゲティングの代替手段を検討・開発している最中です。そこで当社では、Googleが提供する「Privacy Sandbox(プライバシーサンドボックス)」に対し、例えば類似した興味・関心を持つユーザーをグルーピングして配信を行う「Protected Audience API」など多くの技術を提供しています。「Privacy Sandbox」は、プライバシー保護と広告の効率化を両立する新たな仕組み。業界全体の品質向上と、魅力的なユーザー体験に寄与したいと考えています。

─今後の展望は。

小泉:「オンワード・クローゼット」で展開するブランドの多くがリアル店舗も持っています。新規のお客さまを増やしながらも、長年、リアル店舗を利用いただいているファンの皆さまに対しても、コンテンツ開発やパーソナライズ接客など、デジタルを活用した仕掛けをしていきたいと考えています。

大きくは3点。ひとつは、継続して取り組んでいる不便の改善。サイト認知~購入までのプロセスのあらゆる不便を探して、解消し続けることです。2つ目は、さらなる顧客理解。店舗やECなど、お客さまがオンワードのサービスに触れていただくあらゆるタッチポイントで、お客さまを知るチャンスは逃さないこと。そこで得られる様々な情報を整理・活用し、最終的には体験としてユーザーに還元していきたいと考えています。3つ目は顧客体験のアップデート。店頭とより密に連動した施策や、これまでにないデジタル上での表現など、真新しい取り組みにトライしていきたいです。

RTB Houseさんとの連携をはじめ、アドテク領域の進化なくしてはここまで事業が伸長することはなかった。今後もテクノロジーの進化や法規制などを背景に、様々な広告手法が生まれると思いますが、遅れずにキャッチアップして、積極的にチャレンジしていきたいですね。

石原:リターゲティング広告においては、ユーザー目線では「あまり追いかけないでほしい」「もっとレコメンドしてほしい」という2つの相反するニーズがあります。オンワードさんとの取り組みにおいても、理想とする形を実現できるよう、提案をしていきたいと考えています。

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