第60回「宣伝会議賞」一般部門に協賛した日本製鉄は、「鉄を知ることで、日本製鉄の魅力を知ることができるアイデア」という課題で初めての作品募集を実施した。協賛に期待したことや今後の構想について、日本製鉄の総務部広報センター・菊池佳代氏に話を聞いた。

日本製鉄・課題広告より。
“知らない人”の再生産に危機感を持った
日本最大手の鉄鋼メーカーである日本製鉄。同社の広報を担当する菊池佳代氏は「宣伝会議賞」への課題協賛の背景として、「まずは『鉄』という素材の魅力を知ってほしいと考えた」と話す。
2012年に新日本製鉄と住友金属工業が経営統合し「新日鉄住金」という社名になり、その後2019年に「日本製鉄」へと社名を変更した同社。「BtoB企業ではあるものの、生活者の方々に向けた広告コミュニケーションの重要性について検討してきました」と菊池氏は振り返る。
「2012年の統合当時、当社の事業内容や鉄鋼産業そのものへの認知度が低下しつつあること、また一定の年齢以上の方からは『新日鉄』や『住友金属』という旧社名の方が馴染み深いといった課題を認識していました。事業を続けていく中で、これからを担う若い人たちへのアプローチなしには、“日本製鉄のことを知らない人”が再生産されていく一方だと危機感を持ったのです」。
そこで2017年、公式YouTubeチャンネル、公式Twitterアカウントを開設し、若年層を意識したSNSを通じた広報活動を開始。2019年の社名変更のタイミングでは、テレビCMと新聞広告、SNS広告を実施。2023年1月からは、車内ビジョンやTVerにてカーボンニュートラルの取り組みに関するCMを放映した。
「これらは社名認知の拡大、リクルーティングやインナーコミュニケーションの点でも一定の効果が見られました。やればやるだけメリットを感じていくなかで、社名認知の次のステップとして議論したのが、実際に鉄のことを知ってもらえるアクションに通じる施策の実施でした」と菊池氏。それが「宣伝会議賞」への協賛だった。
募集課題は「鉄を知ることで、日本製鉄の魅力を知ることができるアイデア」だ。
「社名の認知を高めたいのはもちろんですが、そもそも鉄という素材の魅力を知ってほしいという思いがありました。私たちの身の回りは、『鉄』でできたものであふれていますが...