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宣伝担当者が知っておきたいクリエイティブの基本

伝えたい「たったひとつ」を磨き上げるためのポイント

牧戸和至氏(クラシエホームプロダクツ)

    クリエイティブ・ディレクションの極意

    ☑広告で「ひとつだけ伝えるとしたら何か?」を突き詰める。

    ☑商品に関わる異なるポジションの人と会話し、思考の量を増やす。

    ☑日頃から視野を広く持ち、表現へのヒントを得る。

オリエンの肝となるのはたったひとつのメッセージ

今回のテーマは「クリエイティブ・ディレクション」ということですが、私からはメーカーの宣伝担当者の視点で、オリエンに至るまでに必要な構えや、実際のクリエイティブに対する判断基準について、お伝えしたいと思います。

さて、当たり前かもしれませんが、「良いクリエイティブをつくるには良いオリエンが大事」です。では実際、“良いオリエン”とはどのようなものでしょうか。

まず当社の場合、【図1】のような情報をオリエンシートに盛り込んでいきます。新ブランドか既存ブランドか、といった、その商品のフェーズによっても異なりますが、市場環境や商品情報、ターゲット像、予算やKPIといった基本事項です。

図1 オリエンのポイント

このなかで、最も大切なものは何か。それがクリエイティブ・ディレクションの肝であり、本稿の根幹となる「伝えたいメッセージ」です。担当者自身の言葉で、「クリエイティブを通して伝えたいこと」を明確にする。それも、「ひとつだけしか伝えられないとしたらどうするか?」を悩み抜きます。

おそらく、広告を通じて伝えたいことはたくさんあるでしょう。メーカーで働く私たちにとって、商品は自分の子どものように大切なもの。様々な開発工程と試行錯誤を経て、生み出された商品ですから、あれもこれも、たくさん良い点を言おうとしてしまいます。宣伝担当者としてはそれらの想いを受け止めながらも、ひとつだけに絞っていかなければならず、これは非常に難しいことです。

でも、ここで改めて、現在の生活者が受け入れている情報量について考えてみてください。

デジタル化が急速に進み、生活者は日々、大量な情報のなかから自分に必要なものを取捨選択しています。「コスパ」や「タイパ」が叫ばれていることからも分かりますが、より効率的に、素早く情報を得ようとしているのです。すでに受け取る側は情報が飽和している状況ですよね。

だからこそ、広告のつくり手は「どうしても伝えたいひとつのこと」を考え抜く必要があるのです。

良いオリエンを行うための時間と情熱のかけ方

それでは、ここからは具体的に、そのワンメッセージに絞り込んでいくためのポイントを考えていきます。大きく分けて4つです。

①早い段階から、商品開発担当などの他部署の担当者と交わる。

まずひとつ目は、「早い段階から、商品開発担当などの他部署の担当者と交わること」。たったひとつの伝えたいことを明確にし、クリエイターに正確に伝えていくには、商品のブランドコンセプトワーク、ネーミング、デザインなど、コンセプトの策定段階から参画することが必要です。

可能な限り、商品が生まれた背景を知る。ブランドに関わる担当者との会話を増やし、そのなかで情報交換をしていきます。定期的なチームミーティングはもちろんですが、それだけでなく個人的に話をして情報を得るなど、とにかく会話を通し、思考の量を増やすことが大切です。

時には一周まわって、元の案に戻ってくることもあるでしょう。でも、それはそれで、伝えるべき強いメッセージなのかもしれません。

②ブランドに対する熱量のあるクリエイター(パートナー)と仕事をすること。

ふたつ目のポイントが...

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